第225話 訪問
「……ここが一人目の被害者宅だ。確か、気術士じゃねぇんだよな?」
大きな家の前で紅宮さんがそう言った。
車は近くのコインパーキングに止めている。
流石に警察官が路駐はしないということだろうか。
してもこの辺は道路も広いし大した迷惑にはならなそうだが、今は警察も苦情とか大変なんだろうな……でもあの車を見て、警察の車だ、とはだれもならないとは思う。
そんなことを考えつつ、俺は言う。
「ええ、そのはずです。一人は女子生徒で、もう一人は男子生徒……で、一般生徒は、女子生徒の方ですね」
この辺の情報については、生徒会の方が詳しい。
というか、誰が気術系で誰がそうでないかなんて、四季高校の中でのみ管理していることだからな。
別に国に申請する義務があるわけでもない。
かといって、国が無理矢理調べようとしたところで、そう簡単にはいかない。
国に所属している気術士、というのもちゃんといるのだが、その質は四大家の足下にも及ばないと言われがちだし。
あまり気術士は国家に所属したがらないんだよな。
元々アングラ扱いされやすい商売だから、というのも大きく、国そのものをあまり信用していない。
「私は既にどっちにも一応、話は聞いてるが、何も聞き出せなかった。お前の手腕に期待してるぜ」
「……まぁやるだけやってみますよ」
そして、紅宮さんがインターフォンのベルを鳴らす。
すると、
『……はい、山崎ですがうちに何かご用でも……?』
向こう側からは中年と思しき女性の声が響く。
おそらくは、当人の母親だろうな。
紅宮さんはそれに、
「あぁ、数日前にお伺いした警察の者です」
そう言ってカメラに写るように警察手帳を見せると、すぐにがちゃり、とドアが開く音がした。
「紅宮さん! どうぞお入りください」
出てきたのはやはり、四十前半と思しき女性で、不思議なことに紅宮さんに随分と好意的だった。
俺は、
「……霊能力で洗脳でもしてます?」
と尋ねるが紅宮さんは苦笑して首を横に振った。
「してねぇよ。というか、武尊なら見れば分かるんじゃねぇのか?」
「確かに。特段、真気の気配はないですね……でも、妖気は感じますので……」
「……! それはどういうことだ?」
「おそらく、まだマーキングのようなものをされてるんだと思います。本人から、母親に残り香が少し移ったのでしょうね。危険なことはまだ無いと思うので、さほど気にすることでも無いですが……放っておくと他の妖魔が寄ってくる可能性があるんで……これをさりげなく渡しておいてくれますか?」
俺は懐からお守りを取り出す。
「これはなんだ? 私にくれた奴に似てるが」
「ほぼ同じものですよ。ただ、妖魔が嫌う真気を微弱に発してるもので、まぁ妖魔避け、みたいなものですね」
「そんなもの作れるのか……」
「気休めに近いところはあるんですけど、ないよりはと。さぁ、行きましょう」
「あぁ」
そして中に入ると、紅宮さんが今回の事情、つまりは被害にあった女生徒に話をもう一度聞きたいということ、そして俺が生徒会の生徒であり、一緒に話を聞くことで違和感などに気づくかもしれないから同席して貰っても良いか、ということについて許可を貰った。
かなり話がうまく、母親は素直に納得し、そして娘を呼びに行った。
「紅宮さん、詐欺師とかになれそうですね」
「今、正反対の職業についてる人間に言うことか……お、来たようだぞ」
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