第224話 待ち合わせ

 次の日。

 学校終わりに四季高校の校門前で待ち合わせていたので昇降口を出てそこに向かうと、真っ赤なスポーツカーが止まっていた。

 流石にあれは関係ないだろう……と思って通り過ぎると、車の窓が開き、


「おい、武尊。無視すんなよ」


 と、サングラスをかけた女性が声をかけてくる。


「……紅宮さん?」


「どこからどう見てもそうだろうが」


「いやぁ……警察なので、パトカーで来るものと……」


「普通の警官ならそうなんだけどな。うちらはあんまり使わない。まぁいざとなったらちゃんとサイレンも鳴らせるぞ」


「覆面パトカー……って、赤とかいいんですか?」


「いいんだよ、別に。大体私が決めてるわけじゃ無いぞ? うちの課長がな……」


「あぁ、少し安心しました……」


 随分と様になっているから、自分で無理を通したのかと思った。

 霊能力者なら、やりようによってはたとえ自分の上司だろうと何だろうと、意見を通すことは可能だからな。

 しかし課長か。

 その課長も紅宮さんに負けず劣らず濃い人なんじゃ無いか?

 そんな気がした。

 まぁ……《裏課》なんて特殊な組織に所属している時点で、言うまでも無い話か……。

 

「それより、早く乗れよ。流石に目立ってしょうがねぇ」


 確かに言われてみると、結構な四季高生徒たちがこちらを見つめていた。

 納得してさっさと助手席を空けて中に座ると、車はゆっくりと動き出しだ。

 窓の外を見ると、少し離れた位置に咲耶が目を見開いている姿が映った。

 ……後で言い訳が必要かもしれない。


「で、早速、例の生徒のところに向かうが、それでいいか?」


「ええ、構いませんよ。術具もほら、色々ありますし。到着したら身につけておいて下さいい。お守り系と、一応武器の類も持ってきてますので」


 お守り系は妖魔からの攻撃から身を守るものばかりだな。

 どういう相手なのかまだはっきりしないため、数が多くなっているが、それでも数個に過ぎない。

 これで大抵の攻撃は防げる。

 耐久性もまぁ、悪くは無い。

 あまりにも強力な呪いなんかに晒されると何ともいえないけどな。


「お守りはいいが……武器か? お前銃刀法違反をやらかして……」


「いやいや、そんなもの警察官の前に持ってきませんから。いずれも普通の品ですよ……見た目は」


「おい。見た目は?」


「これはただの棒に見えますけど、真気を少し注げば起動して刀になります。一般人からは不可視の刀なので、銃刀法違反にもならないでしょう。この曲がってる木は弓ですね。真気が矢となり弦となるので、真気が続く限り無限に射続けられますよ。あとこれは実験的に作ってみたんですが、拳銃ですね。本体はエアガンなんですが、そこに霊素材を色々組み合わせて、真気による弾丸を撃ち出せるようにしてあります。警察官的には一番扱いやすいかもしれません……」


 そんな風に説明していくと、紅宮さんは、


「……お前、発明家か何かか? 次々に色々出して……確かに拳銃が一番良いかもな。ただ近接を考えると刀も貸してくれ」


「お、剣を扱えるのですか?」


「警察官は剣道か柔道を身につけるからな。私は剣道だ」


「なるほど、じゃあちょうど良かったですね……あぁ、真気を注げば、とか言いましたけど、スイッチ式になってて、霊能力者からは直接この術具自体が力を吸収するようになってるので心配は要りませんよ。大した量も使いませんし……」


「ありがたく借りておくぜ……」

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