第222話 同行
その後も必要な情報を与え続けた。
紅宮さんは、やはり《裏課》でそれなりに働いてきたからか、理解力が高かったように思う。
あの時のあれはそういうことか、みたいな気づきもあったようで、感謝していた。
そしてもうこれで十分かな、というところまで説明したところで、
「じゃあ、今後ともご協力お願いしますってことでいいでしょうか?」
と俺が尋ねると、明るく笑って、
「おう、むしろこっちがお願いしたいくらいだ。経験の無い新人が来たかと最初は思ってたが、武尊は大当たりだった」
「そんな大したものでもないですが……」
「ここまでただの霊能力者に気術界のことを説明してくれる気術士なんてまずいないよ。おっと、そういやこの後はどうするんだ?」
「それなんですが、やっぱり被害者の二人に話を聞こうと思いまして」
「まぁそうなるよな……だが、私が話を聞いた限り、大した話は聞けなかったな……」
「何か覚えてないんですか?」
「私がさっきの映像見て驚いたのは、本人達からそんな話をさっぱり聞けなかったからだよ。どうも、あの時の状況については記憶に残ってないみたいでな」
「そういうことですか……」
本当にそうならまずいが……やりようはあるとは思う。
「お、その顔は、何か方法があるのか?」
「まぁ、ただの霊能力者の紅宮さんには出来ない方法がいくつか」
「へぇ……流石だねぇ。ってか、そういうことなら……おい、武尊」
「はい?」
「私も一緒に行って良いか?」
「え?」
「本人達のところに聞き込みに行くわけだろ。いくら同じ高校の生徒会の人間だからって、事件の詳しい話を聞こうとしても拒否されるかもしれないぞ。その点、私が一緒なら、警察だからって言える」
「うーん……?」
どうだろう。
まぁ一般的にはそうだ。
だが、四季高校生徒会は、気術系生徒の問題解決機関だ。
でもだからといって、家とかにいって無理にでも話を聞けるほどでも無いか?
あくまでも協力を求める程度で……。
いや、いざとなれば四大家の力で……というのも難しいかもしれないな。
今回被害に遭ったのは、地方から来てるタイプの生徒だ。
四大家は名前も知られているし権力もあるとはいえ、在野の気術家からはその威圧が聞かない場合があるようだ、というのは理解しつつある。
いきなりほとんど関わりの無い巨大企業の幹部が家にやってきても、えぇ?となるくらいで話をどうしても聞かなきゃ、となるかというとまた別、みたいな話だな。
そういった諸々を考えると……紅宮さんの提案は悪くない、気はする。
「どうやら答えは出たようだな?」
紅宮さんがそう言ったので俺はため息をつきつつ言う。
「そうですね。紅宮さんの提案は悪くなさそうです」
「お、それは良かった。じゃあ早速……」
「いえ、それだったら明日にしましょう」
「何でだ?すぐにした方が……」
「紅宮さんが危険かもしれないからですよ」
「え?」
「俺一人なら、何が来ようと何とでも出来るんですが、紅宮さんが、ふと目を離した隙にどうこうされる可能性がないとは言えないので……妖魔は周囲を探ってる気術士の気配には敏感なものですから」
「だが別に明日になったからって、私の腕が上がるわけじゃ無いぞ?」
「分かってます。だから俺が作った術具をいくつかお渡しするので、その調整に一日くださいって事です」
「術具か……霊能力者の力じゃまともに動かせないものが多いんだが」
「そこは俺の腕の見せようですね。なんとか出来るようにしてきますから。いいですか?」
「分かった。じゃあ待ち合わせは……」
と、明日の予定を詰めて、その日は帰宅したのだった。
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