第214話 警視庁

「……ええと、四季高校生徒会からやって来たのですが、お約束していた件で……」


 昏石先輩の指示通り、警視庁にやってきて、窓口でそう言った。

 気術関係を取り扱う裏課の存在を知ってはいても、実際に尋ねることは流石になく、どこに行ったらいいのかが分からない。

 基本的に政府とか公的組織との折衝を行うのは大人の気術士だからな。

 前世でも、俺はあくまでも四大家の子供でしかなく、そういったことに参加することはなかった。

 

「四季高校生徒会、ですか……ええと、高校生? ちょっと待ってね。約束……?」


 対応してくれた若い婦警が首を傾げつつも、上司らしき人物のところまで確認しに行ってくれる。

 あの反応からして、一般的な警察官は裏課の存在など知らないのだろうな。

 その辺の細かい事情は俺も流石に分からない。

 ただ、誰も知らないでは問題だろうし、誰かが繋いでくれるはずだが……。

 そんなことを考えながらぼんやりと婦警の動きを見ていると、彼女が相談しにいった上司らしき男が、ハッとした顔でこちらを見つめ、それから小走りでやってくる。

 そして俺の前に来ると急にペコペコしながら、


「……大変、お待たせしました! いやはや、四季高校の生徒会からということで……普段とは担当の方が違ったものですから、気づかずに……」


 そう言ってくる。

 いくらなんでも謙りすぎでは無いか?

 と思うが別に問題があるわけでも無いので態度については流して言う。


「いえ、私も最近、生徒会に入ったばかりで細かい事情がわからずにお手数をおかけしまして……」


「そんなそんな! おっと、そうそう……お約束の件ですよね。私がご案内しますので、どうぞこちらへ……」


 その人はそのまま歩きだしたので、俺はついていく。

 裏課まで連れてってくれるのだろうな。

 ふと、先ほどの婦警を見てみると、こちらを目を見開いた様子で見つめていて、なるほど、と思う。

 多分俺を案内しようとしてくれている人物は、普段はこんな感じじゃ無いんだろうな。

 婦警と話してる感じも、どこか横柄というか、偉そうな風に見えたし。

 ともあれ、行くか……。


 そしてしばらくの間、上司の男性の後についていくと、ずんずんと階段を降りていく。

 地下四階まで辿り着いて、警視庁というのはこんなに地下があったのかと驚く。

 しかし、その地下四階のさらに奥まった場所に、


「……エレベーター?」


 そんなものがあった。

 首を傾げる俺に、男性は言う。


「ええ、ここからさらに地下に参りますので……お聞きではなかったですか?」


「いえ、全く……さっきも言いましたけど、生徒会には最近入ったばかりで……」


「でしたら、だいぶ驚かれているでしょうね。警視庁建物は表向きには地下四階までですから」


「表向きには……?」


「事情については、中に入られてからということで……」


 そう言ってエレベーターの箱の中を勧められたので、俺は入る。

 男性も続けて入り、扉が閉まる。

 壁にあるボタンを何階なのか分からないが押して、エレベーターが動きだし、やっと男性は言った。


「警視庁裏課の存在については、職員でも知る者が限られていまして……警視正以上か、気術、霊能力を扱える職員のみです」


「では、貴方も?」


「はい。と言ってもただの霊能力者で、気術士の方と比べれば力の程は知れたものですが……それでも、貴方の力は感じ取れます。上で暴れないでくれてありがたかったです……」


 それでなるほど、と思う。

 あんなにペコペコしてたのはそれを恐れてのことだったのかと。

 

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