第204話 引き込む
「……なん、何なの……あれは?」
言葉に詰まった様子でそう尋ねてくる副会長。
それに俺と龍輝は顔を見合わせ、それから龍輝が俺に言う。
「あれは確か……あれだ、鎌鼬の妖魔を倒しに行った時に教えてもらった妖術の模倣だろ?」
「そうだったな。中々あれは手強かったが……悪いやつじゃなかったし、なんか兄妹で仲良くしてたしなぁ。色々教えてくれたし、いまだに連絡取ってるし、いい関係だよな」
「思うに鎌鼬系って妖魔じゃなくて聖獣くくりでもいい気がするけどな。人を傷つける時はあるけど、すぐ直すし。本能みたいだししょうがないところある」
「つったっていきなり切り傷できたら普通はビビるだろ」
「一般人は風とか葉っぱが吹き込んで切れてるって思ってるんだしさほど問題ないだろ」
「まぁなぁ……そのうち
「それがいいぜ」
そんな話をしていると、副会長が、
「あなた達……なんの話を……」
と言ってきたので、俺は、
「おっと、そうでした。すみません……ええと、なんの話でしたか?」
「あの娘の術についてよ……妖魔の術の模倣とか、聞き捨てならないことが聞こえたのだけど」
「そうですか? 妖魔の術は基本的に妖気を使っていること以外、気術と非常に構成が似ていますからね。真似しやすいんですよ? それも、あれについては本人……本妖魔?に直接教えてもらえましたから、完璧に模倣が……」
「いやいやいや、おかしいでしょ! 妖魔がなぜ、妖術を気術士に教えて……!?」
若干ヒステリックにそう言う副会長。
正直、気持ちはよくわかる。
だが、俺と龍輝は思ったのだ。
特に打ち合わせしていたわけでもないが、龍輝は俺の考えなど言わなくても分かるし、逆もまた然りだ。
もちろん、俺はまだ全てを龍輝に話していないが、正直もう全部言っていいかなと言うくらいの信頼はある。
そんな関係の俺と龍輝は、会長や副会長、書記の様子を見て、そう判断した。
この人たちは何かしらの事情を抱えてはいる。
そしてそれは決して軽いものではないが、俺たちならどうとでも出来そうなものであろうと。
出来なくてもどうにかするのだ。
それくらい出来なければ、四大家など背負っていけないからな。
咲耶もほぼ同じような考えに至っているだろうことは、見れば分かる。
会長にある程度、力を見せた上で、いざという時に会長が咲耶を頼れる……いや、頼らざるを得ない立場を得ようとしているのだ。
咲耶は会長に言うことを聞いてもらう、みたいなことを言っているが、それはそちらの目的を隠すための偽りのようなものだ。
人が本当に他人に従属し、全て言うことを聞くようになるのは、命令される時ではなく、自ら率先して、相手に頼り、寄りかかろうとする時である。
それを咲耶は本能的に理解しているのだ。
俺たち三人の中で、最も野生的なのは実は、育ちの良さそうな咲耶なんだよな……っと、それはいいとして。
俺は副会長に答える。
「妖魔と仲良くしていることを、どこかに報告しますか? 副会長、それに昏石先輩」
俺の言葉に、二人は少し息を呑んだような表情になる。
それは、俺が若干言葉に殺気を乗せたからだろう。
大したものではないが、現代では気術士の世界でも中々味わえないものかもしれないな。
大人の気術士ともなれば違うだろうが、高校生くらいでは。
副会長は、
「……私は……」
と悩んだ様子だが、書記の昏石先輩の方は、
「俺は報告はしないぞ。というか、妖魔と言っても色々いるしな。協力関係のようなものを築いている気術士は地方に結構いる」
あっけらかんとそう答える。
この人の方は意外に清濁合わせ飲むタイプらしい。
こっちの方が会長に向いてないか?
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