第190話 訪問
そんな感じで俺の高校生活が始まったわけだが、次の日からはやはり忙しかった。
手続き関係もそうだったが、普通の高校とまるでカリキュラムが違うので、それに慣れるのが大変だった。
一般生徒たちは、俺たち気術系の生徒がいたりいなかったりすることには気づいていない。
これは、認識阻害系の大規模気術が、校舎そのものにかかっているからだ。
ただごく弱いもので、気術士である俺たちには全く効果がない。
あくまでも、全く気術に縁のない一般生徒だけを対象にしたものだ。
だから油断は出来ないな。
違和感を感じ始めると効きが弱くなったり、また一般人の中にも自然に気術に目覚める霊能力者がいる。
強い真気を持つ者の多いこの学校においては、その可能性はより上昇する。
人は、強い気に影響されると、特別な力に目覚めることがあるから。
そもそも人類が気術にしろ魔術にしろ、そういった特別な力に目覚めた最初の一人というのは、まさにそういう理由でだろうからな。
確認しようはないけれど。
まぁ、心配しすぎることもないのだが。
「……ここ数日で手続き系は全部終わったし、カリキュラムも概ね全部把握できたか……やってけるのかな」
俺が疲れて机に突っ伏しながらそう呟くと、前の席にこちらの方を向きながら座っている君信が同感、といった様子で言う。
「だがやってくしかないぜ? まぁ上級生の様子見る限り、すぐに慣れるんだろ。最初だから頭がこんがらがるだけだ」
「そういうもんかね……普通の学校に行ってた方が良かった気がするよ」
「おいおい、ここに入れなかった奴らがブチ切れるようなこと言うなよ。まぁ、お前は四大家の人間だから、なんとかなったのかもしれねぇが……」
というか、俺的にはそもそも学歴とかどうでもいいところがある。
俺の目標は今でもあくまで、景子と慎司に対する復讐だ。
重蔵だけはああいう理由があったから許さざるを得なかったが、他は別だ。
ただ、それでも情報収集にはここにいた方がいいし、卒業した後に何になるにしても、ここを出ておいた方がいいところに勤められるのは間違いない。
そしてその方が確実に四大家の情報は集めやすいのだから、他に選択肢はなかった。
そこまで考えて、俺は君信に言う。
「……いや、俺にはここに入る以外なかったよ。友人もいるしな……」
「あぁ、昨日話してた四大家の幼馴染か? いずれ俺にも紹介してくれよ。別にコネ作りってつもりはねぇから」
「本当か?」
「……多少はな。でも、お前が許さないだろ。変に便宜を図ってくれとかは言わねぇぜ」
「……ま、正直なのはいいか。それくらいは構わんしな……」
そんなことを話していると、
『高森くーん? なんか呼んでるよー!』
と、教室入り口近くに座る女子生徒が俺を呼ぶ。
俺は窓際の席だからな。
若干遠いが、しっかり聞き取れる。
顔を上げてみると、そこには咲耶が立っていた。
「……お? 噂をすれば」
と君信はからかうように言う。
俺は、
「ちょっと行ってくる」
君信にそう言った。
彼は、
「あぁ。俺のことも話しておいてくれ」
とだけ言って、ついてこようとはしなかった。
それくらいの気遣いはあるということだろう。
君信は人が嫌がらないぎりぎりを攻めるのが上手い気がするな。
いや、たまに一歩踏み込んでくる気もするが、まずいと思ったら即座に引く感じというか。
そういう若干強引な気質というのは俺も欲しいところだが、よほど意識的に身につけるか、天性の才能がいる。
俺には難しそうだ。
そんなことを考えつつ咲耶のところに辿り着くと、
「急に訪ねてきてどうした?」
と尋ねると、彼女は言った。
「それは、武尊様が中々一組に来てくれないからです。私から来なければ忘れていたでしょう?」
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