第187話 部活動紹介
一瞬、ものすごい空気になった入学式。
このまま続けるのかどうか、と思った俺だったが、気術界的には大した話ではないということなのか、そのまま進んでいく。
と言っても普通の入学式なら残っているのは校歌斉唱に閉会の挨拶くらいだろうが、意外にもまだ見るべきものはあるらしい。
『……次は、在校生による部活紹介です』
「……入学式でやるのか。他の機会の全校集会とかでやるんじゃないのか?」
中学校の時を思い出すにそうだったような思い出があるので思わず俺が呟くと、君信が言う。
「中学までは普通の部活だろ? ここは特殊な……というか、気術使った部活も結構あるみたいだからそれだろ」
「……パンフレットには載ってなかったが……まぁ載せられるわけないのか。それでか」
四季高校のパンフレットは入学前に結構読み込んだが、どこにもそんな部活は存在しなかった。
けれど考えてみればわかる話だ。
四季高校のパンフレットに載せられるのは一般人向けの内容だけだ。
まさか気術士を育てるための学校ですなどと書ける訳もなく、またそれに関連する内容も書いてあるはずもない。
だからこそ、入ってみないと分からない細かいことがかなりあるのだ。
「ま、早いうちに実演して見せてくれるならその方がありがたいだろ。どんな部活あるのか楽しみだしな」
「それはそうだな……」
そして、壇上に在校生が登る。
横には順番を待っているのだろう、他の部活に所属している生徒たちもたくさんいるな。
結構な数があるのか……。
部活動紹介が始まると、俺はなるほど、と思った。
気術系の部活とは一体どんなものになるのか、と思ったが、わかりやすいものからマイナーなものまで様々だ。
多くは戦闘系かな。
気術決闘部とかが一番物騒な感じだった。
これは分かりやすく、気術による戦闘の研鑽を目的にする部のようだ。
ランキング戦に向けての研究、実践が主になるようなので、学校での成績を上げるのにはかなり有用そうだな。
実際、部員も一番多いようで、数十人になるようだ。
そもそも気術士の生徒は全校合わせてもさほど多くないので、それくらいでも最大規模になるようだ。
「何に入るか決めたか?」
一通り見て、君信が尋ねる。
俺は答える。
「一応はな。お前は?」
「俺はやっぱり決闘部かな。せっかく腕を上げるためにこの学校に来たんだ。その目的に沿った部活があるならそれが一番だろ。で、武尊は?」
君信がそう言って水を向けてきたので、俺は言う。
「俺は、術具製作部だな」
「え、意外だな! いや、悪くはないんだが」
君信がそう言うのも無理はなく、気術士の世界では基本的に術具作りはそれ専門の職人が作る以外は、メンテナンスくらいしか求められない。
前線で戦う気術士本人が作ることはそうそう無いというのが、俺の前世からの常識だった。
それだけに現代でもそういう感覚が強いかと思っていたのだが、意外にもこの学校には術具製作部、なんて部活があるらしい。
壇上では作った術具を披露していて、中々に面白そうに見えた。
技術はそれでもやっぱり学生レベルというか、さほどでもないのだが、同好の士が確実にいるというのはなんだか嬉しくなるからな。
こちとら、今世では術具作りは幼稚園の頃からやっているのである。
その技術をさらに深められる場所が用意されているのなら、ぜひ参加したいというわけだ。
「好きなんだよ、術具作り」
「へぇ……てっきり武尊は戦闘系かと思ってたぜ。しかしそういうことなら、俺も入ってみようかな」
「いいのか、決闘は?」
「悩みどころだが、お前にくっついてた方が楽しそうだしなぁ。いざとなったら掛け持ちでもいい」
「まぁ、好きにしたらいいが……」
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