第184話 入学式
「……広いな」
気術棟ホールに到着すると、その広さに目を見張る。
通常の学校の体育館の数倍はあったからだ。
加えて観客席も設けられているようで、ここで色々と見世物が出来るのかもしれない。
「ここじゃ、ランキング戦を行うことが多いから、こんな作りと広さになってる。内部空間の広さは、北御門家の気術によて拡張されてるから外側から見たよりは大分広いな」
来栖先生がそう言った。
「ここでいずれ戦うのか……確かに結界も強固だな。妖魔に襲われてもそうそう壊れなさそうだ」
俺が呟くと、横にいた君信が、
「そうなのか? それなりの妖魔と戦ったことまずないから感覚が分かんねぇが」
と言ったので俺は言う。
「中位程度の妖魔なら何の問題も無く防げる感じかな。上位だと分からん。ただ、それは上位以上は強さの上限がないから何とも言えないってだけだからな……」
一応、上位以上にもランクが存在はするが、滅多に見ることが出来ないし、いたとしても適切にランク分けするのは中々難しい。
そのため、ある程度以上の強さを超えたらみんな上位妖魔だ、と言いがちなところはある。
そんな事情を話すと、君信は、
「なるほどねぇ……」
と頷いたのだった。
「さて、それじゃあお前たちは……あの辺に座れ。パイプ椅子あるだろ。男女とも縦一列でな」
ホールの中に設けられたパイプ椅子が並んだ区画を指さして、来栖先生がそう言った。
一クラスで三十人ちょっとはいたが、一般人も含めてだったのでいまは十人ちょいくらいしかいないので余裕だ。
それだけに閑散としてしまいそうだが、他にも在校生用の席などもあるようなので、まぁ殺風景というほどでもない。
それに前方には特設ステージのような場所が設けられていて、そこで何か見せてくれそうな雰囲気があった。
若干位置が遠いから、近いと危ないことをやるのかもな、とか想像するとなんだかわくわくしてくる。
気術士しかいないから気術を使った出し物とかになるだろうからな……。
そういうのは、それこそ四大家が集まったパーティーとかでしか見たことが無く、そう言う場で見せられるのはそれぞれの家の力の程の誇示に近いところがあったので、一瞬の戦場感がありすぎて純粋に楽しむというのも難しいところがあった。
けれど、学生であればまた、違うだろう。
そして、俺たちが席に座り、他のクラスの人間も続々とホールに入ってき座り出す。
その中に一組の者達がいて、見ればこちらに手を振っている人が目に入る。
見ればそれは咲耶と龍輝だった。
あの二人は同じクラスだな。
というか、どうもこのクラス分けは能力と家柄で決まってるのかもしれないな、と思った。
クラスがそろっていく中、クラス毎の真気や振る舞いなどを見ると、そんな印象があるからだ。
ではなぜ俺が三組なのかと言えば、これは美智に目立たないように頼むという配慮を求めて入学してるからだろうな。
細かいクラス分けの実情とかは知らなかったが、その辺も含めて美智がうまくやってくれたのだろう。
俺が咲耶と龍輝に手を振ると、二人とも微笑む。
それでもこちらに来ないところを見るに、俺のあまり目立ちたくない、という意志を尊重してくれているようだ。
そもそも、あの二人がすごく目立っているというか、クラスメイトに囲まれている感じだからな
やはり、四大家本家の娘と、高位の家柄の息子は注目の的なのかもしれなかった。
そして、そんなことを考えている内、ぱっと、ホールの明かりが薄暗くなる。
「どうやら始まるみたいだな」
君信がひそひそとした声でそう言った。
「そうみたいだな」
俺はそう答えた。
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