第180話 一般科目と気術系

「……まず、当然だが気術士のための授業は、一般生徒のそれとは別々に行われる。一般生徒の授業は移動教室以外はここでやるが、気術士の授業はあっちにある気術棟でやるから、覚えておけ。後で案内する」


 窓の外から見ると、そこにはクラスのある校舎よりも大きい建物がある。

 構造も平べったい感じで、中は相当広いというのがパッと見でわかる。

 そして、そこには大規模な術がかけられていることも。

 そもそも学校全体に大きな術がかけられているのは察せられたが、建物や教室など、そこここに術がかけられていて、かなりの資金が投入されているようだなと思っていた。

 その全ては、俺たち気術士と一般生徒が違和感なくここで三年間生活していくためなのだろう。

 だいぶ変則的な形になりそうだが……。

 気になったのは俺だけでなく、クラスメイトの一人らしい少女が手をあげる。


「……お前は、佐伯美琴さえきみことだな。何か疑問があるか?」


 来栖先生がそう尋ねると、佐伯は答えた。


「はい。授業を別々にとなると……私たちの一般科目の勉強とかってどうなるのかと思って」


「あぁ、それも気になるよな。一応言っておくが、ちゃんとテストは受けてもらうから、普通に合格点取る必要があるぞ」


「ですよね……」


「そのためには、ひたすら勉強してもらうしかないんだが、まず、気術士向けの授業は一般科目の授業中に行われるから、お前たちは必然的にそこには出れない」


「やっぱりそうですか」


「だが、数はそんなに多くない。一日六時間あるうちの、一、二時間だな。で、抜けた部分の授業については自分たちで勝手に勉強しろ……というのもきついから、埋め合わせの授業もある。ただこれは六時間分を一時間でやるような高速授業になるから、自分自身での予習復習は必須だ」


 それを聞いて、クラスメイト全員の顔が歪む。

 どれだけ大変なことをやらされるのか、分かったからだ。

 一般科目に加えて気術を学ぶというのは、かなりの無茶なのだ、と。

 そんな生徒たちの表情を見て、来栖は苦笑しながら言う。


「まぁ、慄くのは分かるが、慣れればそんなでもないぞ。抜けなければならない科目についても、そこまで大変にならないように調整してる。これは長年この高校を運営されてきて導き出されたものだから、負担はお前たちが考えてるほど重くはない。それでも努力がいらないとも言えないがな」


 これで少しホッとした雰囲気になった教室。

 とはいえ大変さがなくなったとかいうことは全くない。

 そのため、来栖は続けた。


「まぁ、そういうわけだから、助け合え。一般科目にしても、気術系にしてもだ。言い忘れたが、クラスは三年間、よほどのことがない限り変わることはない。ここにいるメンバーはお前たちの卒業後の盟友にもなる。まぁ、他のクラスと交わることがないわけじゃないが。上に上がるにつれて、合同での授業とかも増えていくからな」


 クラスは三年変わらないのか。

 これを知ったら咲耶とかは哀しみそうだな。

 いや、知ってたからこそ口を尖らせていたのかも。

 俺は詳しい高校の仕組みは聞いてなかったから。

 美智に聞けば一発だっただろうし、彼女も教えようとしていたが、実際に入ってみんなと同じように知った方がすんなり馴染めそうだと思ったんだよな。

 今後わからないこと、不思議なことがあったら美智にガンガン尋ねるつもりはあるが。

 頼れるものは権力者の妹である。


「……さて、それじゃあ一般科目についてはその辺にして、気術系の授業についての説明だが……」


 来栖の説明は続く。

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