第179話 分割
「……さて、ここで話すべきことは、大体こんなもんだな」
教壇の上に立つ、我がクラスの担任であるという
それから、パチン、と指を鳴らす。
すると、教室の中に真気が満ちた。
生徒たちを撫でるようにそれは蠢いていて、あまり気分のいいものではないが、悪意は感じないので弾くのはやめておくことにする。
それから、
「じゃあ、
という二重音声が聞こえ、一般生徒は立ち上がった。
そして、来栖の姿が分身する。
まるで一人の人間の体の中から、もう一人出てきたような感じだった。
だが、別に本当に二人に別れたわけではないと言うことを、俺たち気術士は理解していた。
あれは真気によって形作られた人形だな。
それもそこまで複雑な行動のできないタイプだ。
分たれた方は、そのまま教室を出ていき、一般生徒たちを先導してどこかに向かっていく。
また、最後には俺たちからも人形が分たれて、彼らに無言でついていった。
こちらに関しても、来栖が作り出した簡易的な人形だな。
最初に真気が俺たちを撫でていたのは、このためかと分かる。
そして、一般生徒が教室からいなくなると、来栖は改めて、といった様子で、
「……では、一般生徒がいなくなったところで改めて。気術士の卵の諸君、ようこそ、気術総合学院高等部へ。もうわかっているとは思うが、俺は気術士だ。気術についての授業もいくつか担当するから、色々と遠慮なく尋ねてくれ」
そう言ったのだった。
そんな彼に、生徒の一人が尋ねる。
「あの!」
「ん、お前は……田中
「はい……あの、さっきのは一体……?」
彼もまた気術士であるから、すでに理解していると思っていたが、意外にもそうでもないようだ。
他の生徒の中でも、彼と同じように不思議そうな表情をしているものが多かった。
あまり他人の気術の分析とか得意ではない生徒が多いのかな?
君信は特に不思議そうではないため、彼は何が行われたのか全て理解していると思うが。
巧の質問に来栖は答える。
「あぁ、あれは人形だな。俺やお前らの人形を真気で作って、他の教室に向かわせた。そこには一般生徒用の教師がいるから、何組か合同で授業カリキュラムについて説明を受けることになってる。ここじゃ、気術士向けの説明を交えて行うから、どうしても別々にせざるを得なくてな……。人形を作るにあたって真気で勝手に触れたから、なんか変な感じがした奴らも多いと思うが、その辺は許してくれ」
「そんなことを……わかりました。答えていただきありがとうございます」
そう言って巧が座る。
やはり来栖のやっていたことがわかっていなかったようだ。
彼の説明で、なるほど、そうだったのか、と言う顔をしている者も多い。
……うーん、もしかして、意外に他の生徒の実力は低めなのか?
これくらいのことは、咲耶や龍輝ほどでなくとも、四大家の子供なら大体わかることなのだが……。
いや、君信の説明によれば、四大家は下位の家であっても格が違う、ということだったからな。
つまりはそういうことなのかも知れない。
これくらいが、一般的な高校生くらいの気術士の実力だ、とそういうわけだ。
少し期待はずれな気もするが、高校で学ぶうちに実力もついていくのだろうか?
その辺についても、学校のカリキュラムについて詳しい説明を受ければわかってくるかもな……。
そう思って、俺は来栖の説明に耳を傾ける。
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