第178話 高校でのカリキュラム

「……おい、そこのお前、静かにしろ」


 と、教室のドアが開いて、言われる。

 

「え、あ、す、すみません……」


 と、君信は返答した。

 結界が張ってあったので声は大して漏れないはずだったんだが、俺の言葉に喜びすぎて制御が乱れたな。

 この辺りはまだ、高校生というところだろうか?

 いや……どれだけ年齢がいっても、制御を崩すときは崩すからな。

 咲耶や龍輝みたいに、首筋に短刀を突きつけられても一切真気の制御を乱さない、みたいな奴らは稀だ。

 ちなみにどこでそんな訓練を積んだかと言うと、言うまでも無く東雲家でだな。

 重蔵は恐怖を味方にしろ、とかふざけたことを言いながら、ここ数年間、二人を鍛えた。

 俺も鍛えられはしたが、そういう心持ちの部分となるとあまり意味が無かったというか、前世、死んでしまった記憶があるからか、死の恐怖に対するネジが外れてるんだよな。

 お前はむしろ、生きようとする執着を取り戻せ、とまで言われてしまったくらいだ。

 だが重蔵の言うことはよく分かるので、なんとかしようと頑張ってはいるのだが……今のところ微妙だな。

 どこかで、いつ死んでも良い、いま死んでも良い、みたいなことを考えてるのかもしれなかった。

 いや、理性的な部分では死にたくないって思ってるんだがな……。


「……なぁ、武尊。さっきの話、冗談じゃ無いんだよな……?」


 前方の教壇の上で出席を取ったり、重要事項を話していく、このクラスの担任を尻目に、後ろに軽く振り返って俺にそう尋ねる、君信。


「冗談じゃないから、安心して前を向け。わりと重要そうな話をしてるぞ、担任は」


「あ、あぁ……分かった。でもマジで頼むぞ!? 俺の将来がかかってる」


「分かったって……」


 そして、そこから俺たちは、教師の言葉に耳を傾ける。

 教師の名前は、来栖くるすわたるというらしい。

 比較的若く、まだ二十代後半くらいだな。

 説明の内容は主にこの学校のこと、授業の取り方などに尽きる。

 当然と言えば当然だが、全て一般生徒向けの内容だ。

 気術士向けのそれは、また後でと言う感じかな。

 ただ、気術士と一般人の授業分けがどうなされているかはなんとなく察せられる。

 この学校では、多くの授業が選択制になっているらしいからだ。

 もちろん、指導要領に沿ったものは全員選択させられるようになっているのだろうが、例外が仮にあったとしても、組み込めるようになっているシステムであるのは聞いている限り、間違いない。

 ということは、かなり大変そうだな。

 一般的な授業プラス、気術士系のそれも選択することが俺たちには求められていると解されるからだ。

 一般的な科目については必要最低限でなんとかするしかないな。

 気術士の存在を隠すという手前、一般人としても必要な科目、成績は取っておくことが必要不可欠だから、ここは妥協できない。

 まぁ、気術士系の学問に比べれば、現代の科目は論理的かつ教育の仕方もまとまっていて、なんとかしいやすいか。

 気術士系のそれは、色々とひどいというか、理論とかわかんないけどこうなるんですよねぇ、みたいなパターンが結構ある。

 それを自分なりに分析して理論を見つけたり、うまく工夫したりと、自ら努力していく必要があるのだ。

 それと比べれば、通常科目など……という部分はあるけれども、だからといって手を抜くことはすまい。

 流石に有名国立に入れるレベルまで、とは思わないが、そこそこのレベルのところに入れるくらいで卒業できるように頑張ろうと思った俺だった。

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