第177話 コネ

「……今度は、俺みたいな一般的な気術士の、四大家に対する感覚の話をしようと思うが、いいか?」


 君信がそう言った。

 俺は頷いて答える。


「あぁ、むしろそれが一番知りたいところだ」


「よし。と言っても、あくまで俺がどう感じてるかってはなしになるから、そこんとこ差し引いてくれよな」


「それは分かってる。意見ってのは人それぞれだからな」


 それでも、四大家とほとんど関係を持たない気術士の意見は聞いたことがないから参考になるだろう。


「それはそうだな……で、まぁ俺の生まれというか、出身については東北の出だって話はしたよな。俺の家は小さな気術士団体に所属する、いわゆる土着の気術士家だ。だから四大家とは殆ど関係が無い……別に避けてるわけじゃないぞ? 本当にただただ関わりが無くてさぁ……」


「それで君信は四大家とのコネが欲しい、と」


「そうだよ。四大家は、さっきも言ったが俺みたいな立場の人間からすりゃ、大企業よ。つまりうまいことコネを持てれば、大企業に勤められる!ってなもんだ。即物的で軽蔑するか?」


「いや……向上心があるのはいいことだ。それに、四大家の受けてる仕事は危険性が高いものばかりだからな。そこに参戦したいってのは、むしろいいんじゃないか?」


「俺もそれは知ってる。俺んちみたいなのがやる仕事は本当に簡単なもんばかりだからな。小さい呪物の浄化とか、魑魅魍魎の退治とか……心霊物件の除霊とかもあるな」


「どれも大事な仕事だろ?」


「そうさ。だけど、やっぱり若い内は実力をつけるために修行もしたくてなぁ……東北じゃ、そういう仕事は大きい家ばかりがやるからさ。四大家のどこかに雇ってもらって、前線で力を振るってみたいのさ」


「気持ちは分かるが……別に普通に訪ねれば雇ってくれるんじゃ無いか? 割と定期的に人を取ってるが……」


 四大家、と言っても全てを家門の人材だけでこなすというわけにはいかない。

 大きなイベントなどでは様々な家から人を集める。

 その際に行われる面接や実力試験にかり出されることは俺もあった。

 ぱっと見で実力を判別できる気術士というのは意外に貴重だからな。

 ある程度、術を見せて貰う、とかしなければ分からない場合、時間がかかる。

 だから俺もいいように使われるわけだが、美智には世話になりっぱなしなので断れないのだ。


「お前、そういう場合の試験を受けるのすら、コネがいるんだぞ!?」


「え、そうなのか? 試験くらい、みんな受けられるんじゃ……」


「国家試験とかじゃ無いんだ。まず、試験があるって情報すら教えてもらえなかったり、試験への申し込みをとりまとめてる家に相談する必要があったりとっか……本当、面倒くさいんだよ……」


「マジか……」


 流石にこの辺は知らなかったな。

 もう少し公平に行われているものかと思っていたが……ある意味では効率的かもしれないが、容易に腐敗に傾くことも理解できる。

 一応、最後には俺とか美智とかが見て落とすべきは落としているので質は担保されているのだが、もっと拾えるべき人材があるのに見落とされているのは勿体ないな……。


「俺だって何度かそういうのに正攻法で挑戦しようとしたが、駄目だったな。で、最後の手段でここに来たわけだ」


「なるほどなぁ……効果はありそうか?」


「あるだろ。早速、武尊、お前みたいな奴と知り合えたし、情報交換も出来そうだぞ」


「違いないな……俺からしても、大分参考になってる。そもそもお前の実力なら、下働きにせよ、四大家が雇ってもいいと思えるくらいの力はある。機会があったら雇ってくれるよう、俺からも口利きしておくよ」


「えっ、ま、マジで!? よっしゃー!!」

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