ゴリラとシールド

第11話

　年末は最後までバタバタしながら仕事納めをして、年末年始休暇に入った。

　休暇中にストレスがない毎日を過ごしていると、静かに自分と向き合える。これからの自分の人生についてじっくり考えた。

　会社での仕事はあくまでも収入を得る手段だ。会社に気の合わない人がいるのはしょうがないことだし、避けられないこと。

　佐藤さんを変えることはできない。自分がどう行動するかが重要なのだ。

「変えられないものを受け入れる力。そして受け入れられないものを変える力をちょうだいよ」

　宇多田ヒカルのWait & See～リスク～の歌詞が頭に浮かぶ。変えられないものを受け入れて、受け入れられないものを変えよう。

　忘年会で美香がアドバイスしてくれたコンプライアンスについて、年始の仕事始め早々にやってみよう、と前向きになる。

　ゴリラにだって盾（シールド）が必要。自分を守る方法を知らないと、打ちのめされて壊れてしまう。ゴリラがシールドを持っている絵を想像して一人ニヤつく。

　年始の初出社日。髪を切って、強そうに見えるメイクに変えて、気分一新。去年までの弱い自分じゃない。

　パソコンを開いて、早速コンプライアンス部にアポイントメントを取った。

　すぐに返信があり、早速面談をしてくれるとのこと。佐藤さんから攻撃されるかも、という不安がよぎったが、深呼吸をして自分の感情をコントロールした。

　この深呼吸は、休暇中にストレス解消法を調べているときに見つけてやり始めた。ストレスを感じる状況にあっても平穏を保つことができるらしい。

　――うん、落ち着いてきた。大丈夫。