第6話

「今、お時間いいですか?」


「いいよ」


「実は、佐藤さんにサシ飲みに誘われて。二人きりは嫌だからさっき断ったんですけど。また誘いのメールが来たんです。断ったら失礼ですかね?」


「断っても失礼ではないと思うよ。でも、白崎さんを誘ったのに変な意味はないと思う。入社したばっかりだから、ただ、一緒に飲みたいだけだよ」


 頼りがいがある先輩の「ただ、一緒に飲みたいだけだよ」という一言が少し引っかかったが、もう一度断ることにした。


『先ほどもお伝えしましたが、アフターファイブは忙しいので行けません』


 その日、佐藤さんからの返信はなかった。


 佐々木さんは、佐藤さんが誘ってきたことに変な意味はないと言っていたが、どうも引っかかる。


 断ったのにまた誘われたし、最後の私の断りメールに対しての返信がないのも気になる。


 なぜ断られてもまた誘ってくるのか。そんなにもして飲みに行きたいのか。


 今思い出すと、面接のときに佐藤さんが「お腹空いた」と言ったのは、私の反応次第で、飲みに誘おうとしていたのかもしれない。


 明日から出社するのが憂鬱になった。


 

 次の日、佐藤さんは朝出社すると「おはよう」とだけ言って、雑談をすることなく仕事を開始した。


 佐藤さんの態度が急変している。誘いを断ったことに対して、怒っているのがわかる。


 その日を境に私に対する佐藤さんの態度が悪くなり、だんだん会社に行くのが嫌になってきた。 


 パーテーションがないので、目の前にPCモニターを設置して、せめても、佐藤さんの顔が見えないようにしようと、IT部門に依頼をして、設置してもらった。

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