第5話
入社から二か月後。佐藤さんとの一対一の会議終了時間に差しかかった時に、ふと佐藤さんが聞いてきた。
「ところで、いつ飲みにいく?」
「……えっ? あ、あの。業務外の時間は忙しいので行けません」
入社早々にメールで誘われて以来、話に出てこなかったので社交辞令で終わったのかと安心していた。
思わぬ誘いにうろたえたが、きちんと断った。
「……ああ、業務外ね」
佐藤さんは、意味深につぶやくと、次の会議がある、と急いで会議室を出て行った。
断ったあとの緊張が収まらないまま、自分の席に戻った。パソコンを開くとすぐに、佐藤さんからメールが届いた。
さっき断ったのにまた誘いのメールだろうか。メールを読むのが怖くなって、メールを開けずに他の仕事に取り掛かった。
しばらくたって、もしも緊急の大事なメールだったらどうしよう、と不安になり、緊張しながらメールを開いた。
すると、飲みについてではなく、会議中に話していた新しいプロジェクトの資料が送られていただけだった。安心して『ありがとうございます』と返信をした。
しばらくすると、またメールが返ってきた。
『入社早々お手数ですがよろしく!(飲みいくか。笑)』
――さっき、会議室で断ったばかりなのに。あまりのしつこさに怒りが湧いてきた。
しかし、入社したばかりでこの会社のしきたりがわからない。上司の誘いを断るのは失礼か第三者の意見を聞きたくて、隣に座っている佐々木さんに相談した。
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