第4話
私は、誰もいない静かな空間で集中して仕事をするタイプだ。
この会社はフレックス制だったので、朝早く出勤して、同僚が出社する前の静かな時間に集中して仕事をしていた。
居酒屋での歓迎会の後、佐藤さんも、私と同じ時間に出社するようになった。
佐藤さんと私の間にはパーテーションがないので、パソコンを見ていても、目の前に座っている佐藤さんが何をしているのかが視界に入ってくる。
佐藤さんは出社早々、話しかけてくる。
ある日には、佐藤さんが「女性とどうやってコミュニケーションを取ってよいかわからないんだよね」と朝から話しかけてきた。
佐藤さんが言うと、仕事ではなく、プライベートのことを暗に示しているように聞こえる。
既婚者なのに何を言っているのだろうか。
何を言えばよいかわからず、「はあ……」とだけ答えた。
――――――――――――――――――――
毎週一回、佐藤さんとの一対一の会議がある。プロジェクトの進捗確認や自分のキャリアについて話す場だ。
今日は、中途入社者として、この部署に対する私の率直な意見が聞きたいとのことだ。
「この部署の方たちは優しい方が多くてやりやすいです」
「それはよかった。ところで、柿口はさ、この部署内で嫌われているんだよね」
佐藤さんが、同じ部署の柿口さんの悪口を言い始める。以前、柿口さんと少し話をしたが、悪い人ではなさそうだった。なぜ悪口を言うのかが不思議だった。
「そうなんですか。いい人そうですけどね」
悪口に同調するのは、悪口を言っているのと同じだ。佐藤さんの意見を否定はせず、でも、同調もしない返答をしてその場をやり過ごした。
仕事ができる佐藤さんが、人の悪口を言うような人であることがわかって、幻滅した。
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