第3話
数日後、企画部企画一課のみんなが私の歓迎会ランチを開催してくれた。
帰り道、会社のエレベーターの中で佐藤さんと二人きりになった。
「白崎さん、今日、面接の時と同じ服装だね」
「……えっ、私が面接で着ていた洋服覚えていたんですか」
「うん、白崎さんはスタイルがいいからモデルみたいだな、と思ったんだよね」
「あはは、そんな。スタイルよくないですよ」
面接で着ていた洋服を覚えていたこと、スタイルについて褒められたことに少し疑問を感じた。しかし、スーツをスタイリッシュに着こなす佐藤さんは、人の服装に興味があるだけなのかもしれない。
悶々としながら、仕事に戻った。
数週間後の金曜日に企画部の歓迎会があった。
居酒屋に着くと、二つのテーブルが予約されていて、既に何人かは席に着いていた。佐々木さんの隣の席が空いていたので、そこに座って飲み物のメニューを見る。
企画部は企画一課と二課から成る。私が所属しているのは一課で、二課の人とじっくり話すのは今日が始めてだった。
みんないい具合に酔っぱらった頃、隣のテーブルで話している声がふと耳に入ってきた。
「受付の五十嵐さんは、スタイルいいよね」
「たしかに。でも、秘書の中村さんの色気、私、好きだな」
「うん、中村さんもいいわね。あの身体にピッタリしたスカートはエロいよね」
社内の女性に順位付けをして、噂話に花を咲かせている女性の先輩達。女性の外見を順位付けするなんて、同性の女性が言ってもセクハラに値する。聞いていていい気分はしない。
「佐藤さんはどの女性が一番ですか?」
噂話をしている女性の先輩達の一人が、佐藤さんに聞いた。佐藤さんが面接の服装を覚えていたことをふと思い出し、気持ち悪くなってきた。
「うーん、そうだね――」
佐藤さんの答えは聞きたくない。これ以上隣のテーブルの会話が耳に入ってこないように、私の隣に座っている人の方に身体を向けて、話を始めた。
必死に笑顔を作って話に集中しようとしたが、全身から血の気が引いていくのを感じた。
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