第2話

 数週間後、めでたく採用の連絡を受けた。現職の退職手続きを済ませて気分一新、初出勤日を迎えた。


「よろしく。俺、今日は一日中会議で埋まっていて時間を作れないんだ。ごめん。席は佐々木さんに聞いて」


 佐藤さんはそう言うと急いで会議室に向かった。


「はじめまして、白崎さん。佐々木です。よろしくね」


「よろしくおねがいします」


 この会社はパーテーションなしのデスクで、長いテーブルの両方に人が座るデザインだ。


 佐々木さんは、彼女の隣の席を指さした。


「私の隣が白崎さんの席よ。白崎さんの席の前は佐藤さんの席よ」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


「わからないことがあったら、なんでも聞いてね。ところで、今時間あったらコーヒーでも飲みに行かない?」


「大丈夫です。お願いします」


 コーヒーを飲みながらお互いの自己紹介をした。佐々木さんは企画部企画一課の課長。二児の母で、この会社で二十年も働いているというベテランさんとのこと。気さくな佐々木さんに早くも好感を抱いた。



 入社して数日後、パソコンに向かってメールを打っていると、向かいの席に座っている佐藤さんが話しかけてきた。


「白崎さん、性格診断ってやったことある?」


「ないです」


「リンク送るから、時間あるときにやってくれないかな? この部署の人はみんなやったんだ。白崎さんがどんな人かを理解したいからね」


「わかりました」


 送られてきた性格診断のリンクをクリックして、早速やってみる。直感で答える質問形式だ。自分の思考回路がわかって結構面白い。


 結果を佐藤さんにメールで送ると、すぐに返信が来た。


『早速ありがとう。白崎さんの性格診断の結果、興味深いね。これを酒の肴にして飲みにいくか!』


 この誘いは一対一の飲みということだろうか。まあ上司だし、変な下心はないだろう。飲むのは好きなので、もし嫌な気分になったらすぐに帰れるようにと文面を考えてメールを返信した。


『早速のご返信ありがとうございます。仕事帰りにさくっと一杯だけいきましょう』


『オッケー。さくっと一杯ね』


 佐藤さんの返信がすぐに来たが、具体的な日程は決めずにメールのやり取りを終えた。

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