過去の匂い
自分がこの下宿を出る二週間ほどまえに、K君はスコットランドから帰って来た。その時自分は主婦によってK君に紹介された。
自分は老令嬢の態度が、いかにも、
老令嬢が出て行ったあとで、自分とK君はたちまち親しくなってしまった。K君の
これから自分はK君の部屋で、K君と二人で茶を飲むことにした。昼はよく近所の料理
二週間の間K君と自分とはいろいろな事を話した。K君が、いまに慶応内閣を作るんだと言ったことがある。慶応年間に生まれたものだけで内閣を作るから慶応内閣というんだそうである。自分に、君はいつの生まれかと聞くから慶応三年だと答えたら、それじゃ、閣員の資格があると笑っていた。K君はたしか慶応二年か元年生まれだと覚えている。自分はもう一年の事で、K君とともに枢機に参する権利を失うところであった。
こんな
ある時自分は、不愉快だから、この家を出ようと思うとK君に告げた。K君は賛成して、自分はこうして調査のため方々飛び歩いている
自分が下宿を出るとき、老令嬢はせつに思いとまるようにと頼んだ。下宿料は負ける、K君のいない間は、あの部屋を使ってもかまわないとまで言ったが、自分はとうとう南の方へ移ってしまった。同時にK君も遠くへ行ってしまった。
二、三か月してから、突然K君の手紙に接した。旅から帰って来た。当分ここにいるから遊びに来いと書いてあった。すぐ行きたかったけれども、いろいろ都合があって、北の果てまで推し掛ける時間がなかった。一週間ほどして、イスリントンまで行く用事ができたのをさいわいに、帰りにK君の所へ回ってみた。
表二階の窓から、例の
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