作家がひょんなことから文鳥を飼うことになる。小さく可憐な生き物の扱いにまごつきながら、次第に愛着が湧く。
時折、かつての色っぽい思い出が蘇ってくる。そして、唐突な別れ。
読んでいてクスリとさせられる部分がある。例えば、
「自分の指からじかに餌を食うなどということは無論なかった。(中略)二、三度試みた後、自分は気の毒になって、この芸だけは永久に断念してしまった。今の世にこんなことのできるものがいるかどうだかはなはだ疑わしい。おそらく古代の聖徒の仕事だろう」
聖徒! しかもそのあとで、「三重吉は嘘をついたに違いない」と続く。
生き物は、思い通りにいかない。
つげ義治やさくらももこの漫画でも、確かこの愛らしい鳥をモチーフにあったはずだ。
誰か僕に、「鳥を飼ってごらんなさい」と言ってくれないものか。