七
「今月はいつも通り送金ができないからそっちでどうか都合しておけというんだ。年寄はこれだから困るね。そんならそうともっと早く云ってくれればいいのに、突然金の
「いったいどういう訳なんでしょう」
津田はいったん巻き収めた手紙をまた封筒から出して
「貸家が二軒先月末に
彼は開いた手紙を、そのまま
「なにそんな家賃なんぞ
津田の言葉に
「御父さまはきっと
「うんこの前京都へ行った時にも何だかそんな事を云ってたじゃないか。年寄はね、何でも自分の若い時の
津田は
「で今月はどうするの。ただでさえ足りないところへ持って来て、あなたが手術のために一週間も入院なさると、またそっちの方でもいくらかかかるでしょう」
夫の手前老人に対する批評を
「藤井の叔父に金があると、あすこへ行くんだが……」
お延は夫の顔を見つめた。
「もう一遍御父さまのところへ云って上げる訳にゃ行かないの。ついでに病気の事も書いて」
「書いてやれない事もないが、また何とかかとか云って来られると面倒だからね。御父さんに捕まると、そりゃなかなか
「でもほかに
「だから書かないとは云わない。こっちの事情が好く向うへ通じるようにする事はするつもりだが、何しろすぐの間には合わないからな」
「そうね」
その時津田は
「どうだ御前岡本さんへ行ってちょっと融通して貰って来ないか」
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