五
寝る前の一時間か二時間を机に向って過ごす習慣になっていた津田はやがて立ち上った。細君は今まで通りの楽な姿勢で
「また御勉強?」
細君は時々立ち上がる夫に向ってこう云った。彼女がこういう時には、いつでもその語調のうちに或物足らなさがあるように津田の耳に響いた。ある時の彼は進んでそれに
彼が黙って
「じゃ芝居はもうおやめね。岡本へは私から断っておきましょうね」
津田はちょっとふり向いた。
「だから御前はおいでよ、行きたければ。おれは今のような訳で、どうなるか分らないんだから」
細君は下を向いたぎり夫を見返さなかった。返事もしなかった。津田はそれぎり
彼の机の上には比較的大きな洋書が一冊
彼は結婚後三四カ月目に始めてこの書物を手にした事を思い出した。気がついて見るとそれから
しかし今彼が自分の前に
「そう
彼は黙って
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