第3話 深夜に集まる小さな気配①
神社の夜ー
完全なる静寂....ではない。僕、伊勢宮稜は時折こんな風に目を覚ます。
あやかしの気配だ。今日は月はまんまるだった。こんな夏の夜には必ずあやかしがやってくる。
「稜、寝なさい」
「庭見てきます」
子供にとっての神社の境内や庭は異世界と言ってもいい。ましてやここは伊勢神宮に近い名も無き神社。かつては大繁盛したらしいが、天命の余波で縮小したと聞いている。
子供心にも何か大事であった気配は察知できた。僕がこんなご時世でもしっかりと生きていられるのは両親の力が大きい。
力と言っても権力や腕力では無い。
何かもっと大きく包み込むようなーーー
さわさわさわ
かなかなかな
伊勢の遠くから響くような晩夏の風と秋を運ぶ虫の声。大昔の詩人が幽霊で現れたら、静かに一句を読むだろう。
家の庭を降りたらすぐに境内に繋がる裏口に出た。
見覚えのある大きな白い狐が高く遠吠えするように鳴いている。早朝の親子連れだ。
しかし小狐たちが居ない。
母狐はどうやら子供と逸れたらしかったーーー
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