第4話 深夜に集まる小さな気配②
その狐は体毛は白く、目は穏やかな青色だった。神社の中でも妖というよりは神さまの気配もする。
早朝では陽に照らされて黄金に見えたが、今は高く登った月明かりに照らされて青く銀色に見えたのだ。
「綺麗だな」
思わず呟くと母狐はゆっくりと僕のほうを向いた。小学校の年齢の自分と並ぶと体躯はかなり大きく見える。子供を探しているのだろうか。しっぽにじゃれついていた2匹は見当たらない。
「コーーーーーン.......」
母狐は空に届けるように鳴き続けた。そこに居るんでしょう?我が子を帰して。
そんな声が僕に聞こえる。
ねえ そこに居るんでしょう?
(何か居るのか)と暗がりに目を凝らすが、見当たらない。その時に「稜?」と僕を嗜めるような声がして、さらに僕は振り向いた。
「母様....」
「あなたを追って来たのよ。稜。妖から離れなさい」
夏といえ神社には独特の冷気がある。それは幽界と浮世と現世を現にする不思議な空気感だった。
「母様、僕を追って来たの?」
「当たり前でしょう」
母狐と母様を重ねる心地だ。ぼくを見つけたように、母狐もあの可愛い2匹を見つけたいのではないだろうか。そこに人と妖の違いは無い気がする。
「稜」
「小狐が居たんだ母様。いつも...一緒に。探してるんだと思う」
「小狐?」
また狐が空に向かって遠吠えをした。
母もまた空を見上げる。狐に向くと、狐は尻尾を下げてしょんぼりと引き返すところだった。
「あなたがそう鳴くから、うちの子が心配して起きてしまったのよ。探しましょう」
握ってくれた手はとても暖かかった。
(思えば母が手を握ってくれたのは後にも先にもこの時だけだった気がするーーー)
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