第10話 リストカット
心は癒えなくて、ベッドの中で暗い感情を深めていった。
僕は社会というものを嫌悪していた。学校生活は苦行でしかなかった。友人というものは表層的な関係であることを望んだ。僕の心を丸裸で見られては、幻滅されるのがオチであろうことを理解していた。僕の経験する社会は学校だった。学校というものに幸福を感じたのは小学校までだった。中学生のときから僕は社会というものに絶望した。傷害、脅迫をいじめというありきたりなワードでマイルドにし、時間が経つと若気の至りとかいう言葉で風化を表現する悪人が跋扈していることを理解した。痛みを感じない人間の存在に気づいてしまった。そこから壊れていった。人を殺す夢を見だした。親や教師は成れ果てだと感じた。腐った社会が生産した成れ果て。その社会の一員になることは僕にとって単純な人殺しになることと同義だった。心はぐちゃぐちゃした感情が混じりあって、諦念へと変容した。諦観した。それが最後の防御だった。そして、僕は他人の目を恐怖した。心から侮蔑や嘲笑の目を恐れた。僕は平凡に生活した。レールからはみでたら、あの目で見られるであろうこと悟った。僕は心をはやく落ち着かせたくて自傷するのだ。神経が昂って、口走ってしまわないように。壊してしまわないように。憎しみの血液が流れているのを感じながら、僕は笑い、おどけた。吐きそうな毎日を送った。だから、嫌悪する。この社会を嫌悪する。
リストカットした。スーッと平静な情緒が現れた。
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