第15話 押し込められた事実


「よし!じゃあそろそろここらで、自己紹介しますか!何を言うべきかな……とりあえず皆の種界名と名前をそれぞれ皆で送り合おうか。」


がさごそとプロットツールを大量に押し込んだ鞄からその内の一つを見つけ、ごり出す。

ここぞというときにしか輝けない。

さぁ、今が日の目を浴びるときだ。


「んー、っとね……」


……皆の中央に置き、端末へ接続。

ここまで問題なく動作。灰色くんと向かい合うように離れる。


「うん。ということで、私から……キミも私と同じように反対から手を翳して。」

「え、あぁ……。」


二人で翳したそのテーブルの上でマーブル模様が不規則にうねる。

(ニオラス・アーベントです!)

(円木伽藍です……。よろしくお願いします……。)

(……ニオって呼んで!ニオって呼んで!頼む!)


「おぉうぇ!?」

ほっ。驚いてくれた。


「へぇ!よろしく。」

地球へ来て初めて名を名乗る私。

ここまできて、出会ってから……ようやくだ。長かったよ。多分。


キミの名前、ガランって言うのね。

なるほど。悪くない名前じゃん。大切に覚えておくよ。


「ふふん……うん、これからよろしくね。どうだった?面白いでしょ、これを使っての初めての自己紹介は?」

「すっごい、言葉じゃ表せないような初めての感覚だった。」

でしょう!良かった。彼にも伝わったようだ。


「そうそう、基本的に教えたくない情報とか意図しない考え事とか一瞬過ったノイズとかは相手に伝わらないから安心して。脳内盗聴じゃなくてあくまでもこれは自己紹介用だから」


「次ぃ」

「あっ、じゃ私か。」


代わる変わる彼と手を翳していく。

ロロニ、ノーザ、ビストと……

表情から緊張がつたわってくる。

彼は三人に対しどんな印象を抱いたのだろう?

ドキドキ。


「なんかやっぱこそばゆいね」

「そういうもんでしょ」

私は満足してそそくさと鞄に仕舞う。


「というか、それが役に立つところ、久しぶりに見たな」

「……私はこれが何かに使えるって信じてたから。」


幼い頃から使っていたこの子がこんなところで……。生きていると何が起こるかわからないって言うけれど本当にそうだったのか。

あの頃の愛着を思いだせたな。


……


「んでもって、実は私達は故郷の惑星ラノハクトってとこから知的生命体が確認されたこの星まで、「授業の一環」として遥々調査しに来てたってなわけなんだよ。どう思う?」


ついに言ってしまった──


「……どう思うって……え? そうなのか!?」


そうなんだよ。黙っていてごめん。


「この星の生命体における生活様式、技術、文化とか現地調査のためにこの星とその影響関係のあるほぼ全ての物体の時間を一時的に止めてるんです。現地の混乱、特にあなた方知的生命に認知されることを避けるために。……厳密には止まってはいないのですが。」

ノーザがこっち視点の成り行きを灰色くんに向け説明してくれた。


「時間を止めて調査!?、えぇえ!はぇー。」

彼の驚きの表情が刺さる。こんなにも驚くのか、そうかそうか。


「元々は人工現実でこの星を再現して環境変化への対応とかバイオロギング等のシミュレーション調査していたのですが、実際その予測は表面上の見えている情報を組み合わせた推測に過ぎず、裏側の隠されているところやそれが真実かどうかなんてわからなかったそうです。なのでその答え合わせをすべくこの変哲な星で現地調査を決行。我々が幾つもの銀河を越えて遠来してきたってわけ──」


「ノーザ待ってあげて。」

私はノーザを止めてあげた。

彼のために。


「ごめんなさい、ちょっと待って、いや、これかなり情報量が多いよ嘘やん……」


だよねぇ。そう言うと思ったよ。

考えるのをやめたくなるような長ーい話と繰り広げられた単語の羅列。

それが思考に関係なく流れてくるんだ。ラノハクトの授業を受けている身からすると、よくわかるよその気持ち。

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