第13話 無事集合完了です。

私は重たい足を引きずるようによたよたと歩く。

本当に待ち合わせ場所に向かうため……私は歩いているの?

会えないよ……途方もないよ……。


頑張ろ。


右見て、左見て、あー。大丈夫そう。

ゴー。

この道広いな。んー。まぁ大丈夫でしょ。

ゴー。

この道大丈夫?ちゃんと続いてる?あ、誰も見てないよ。

はい、ゴー。


ところどころ道端でこっちの生徒や研究者に紛れて地球人がつまんなさそうな顔つきで止まっているのが分かる。

見渡しても彼だけ止まっていないのは何故なのだろうか。


「そうそうここ。薄茶色の建物の。」

「ここが……?」


モノクロに塗りかためられ、そびえ立つ建物たちに囲まれながら、目的地はひっそりとそこに佇んでいた。


なんだか私みたい。


ノブに手をかけ、体を押し付ける。

「カランカラン……」

何だ!?どうした!?

突然の軽い金属音にビビらされる。


甘くて苦い、麗しい香りが漂っている。

並べた銀の器に黄色い物を注いだまま固まった人が一人。こんな姿を見られるとは知らず、馬鹿め。何してるんだ。

……広くない空間に知らない人がいると圧があるな……。


「ねぇねぇ、ここって何のための場所なの?」

奇妙な部屋にやって来て縮こまりながら率直に気になったことをぶつける。


「飲み物とかお菓子とか食べて休憩するスペースだよ……この人に頼んだら出してくれるんだ、対価としてお金が必要だけど」


「はぇーん」


質問してみたものの、あれやこれやが目移りしてしょうがない。

これは今に始まったことじゃないけれど。


「あぁそうだ、君の言っていた例の友人は何人来るの?」

椅子に座り、この香りに蕩れながらよくわからぬものがぶら下がり尽くしている天井を眺めていたら、背後の灰色君が聞いてきた。

「えぇと、三人。ふふん、楽しみにしててね。」

ようやくこの星で集まれるのか……やっぱり彼を見たら驚くのかな。


首を上に反り倒し、彼の顔を拝めると表情が硬くなっている。ん?どうしてだろうか。まずいこと聞いたっけ?



入ってすぐの棚にずらりと色とりどりな原石のようなものが飾られていることに気づく。

うわぁ、綺麗。


お手頃ターゲットのお出まし。いてもたってもいられなくなる私。鼻唄を奏で物珍しそうに、店内のオブジェクトの物色タイム開始。


置かれていた、拳より少し小さい位の鉱石であろうものは十を越える。

瑪瑙、カーネリアン、ソーダライト、アメジスト……へぇ、なるほど。

名前と紹介の札が添えてある。邪念に関する説明は……見当たらない。

それらの輝きはラノハクトではお目にかかれない無いものだった。


いやはや……良い代物ですねぇ。


棚に対し満足するまで鑑賞を終えると、

彼は窓に掛かる布を両側から閉め切り、テーブルの席へ移動し、他から席を3つほど取り寄せ、私を手招いた。


「こっちで待ってようか」

「ありがと、気が利くじゃん♪」

感情は灰色のままだけれど、顔つきや仕草がなんか着いた瞬間と違うんだよな、体調悪いのかな?


あの子らは向かいの三つに座るだろうから、私はこっち。灰色くんの隣。

ぼーっとしている。疲れているのだろうか。

あんだけ歩けば、か。

そんな彼を見ていると私はなんだか眠くなる。


上下の目蓋が引き寄せられていく。

視界が途切れて……


……すやぁ。

おやすみ……。


……コンコン……コン。


ぬっ!?聞き馴染みのある足音!これは!


暗闇だった世界を取り消し、辺りを見渡す。

するとここはキッサテン!

そういえばそうだった。

ややっ、どのくらい寝ていた?


あ!きたきた!

「やっほー。」


「おいすー。」

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