第11話 申し訳なさに幽閉されて

興奮と笑いの山を越え、一通り過ぎる。


「ここがPC室──」

「ほぉー。」


「ここが家庭科室──」

「ほぉーー。」


「ここが保健室──」

「ほぉーーー。」


授業の役割に応じた異なる空間が連なっていた。内部はこんな造りになっているのか……。

試しに一通り受けてソレを染み込ませてみたいなぁ。

というか、それぞれ部屋を覚えてこの規模の校内を全部歩いて移動するんでしょ?

ナビ無しで。

地球の学生諸君らは疲れたり迷ったりしないの?

私には迷って疲れる自信があるんだけど。


「これで二号館は周り終えたね」

「楽しかった~ありがとう。」

青空から始まったこの建物は嘘みたいな場所だった。

灰色くんのお陰でかろうじて性質の理解はできている。はず。

いやぁ、着いてすぐの地点にも拘らずいきなり見応え抜群のスポットだ。地球を侮っていた。

こんなに遠くの文明には私が今まで見たどれとも違う人生があるのだろう。


いやぁ。……楽しい。


「そういえばキミはなんでここの屋上にいたの?」

「……あぁ、僕は少しだけやりたかったことがあって、あそこの景色を見たかったんだ。君にこの高校の中を教えてあげるのを優先するような、大したことない用事だよ。」

「ふぅん。できるといいね、そのやりたかったことってヤツ」

「──そうだね。」


灰色くんの背中が急に遠く見える。

ま、見えるってだけなんだけど。

さて、お勧めされた待ち合わせ場所であるキッサテンとやらへ向かいましょうか。

こんな面白くて癖のある学校文化のある地球のことなんだ、人が暇を潰すような場所はきっと想像を絶するようなとんでもない場所なんだろうな。


事前情報ゼロで地球を歩く私は、まだ見ぬトンデモスポットに期待をモリモリと詰め込んでいる。その最中、灰色くんからとある提案をされた。


「──つまりキミがダンボールに入り、私がそれを台車で運ぶ……?」

「そうそう。そうなんだよ。」

「ちょっと待ってよ、私がこれを運ぶの?これ箱?うるさそうだし、今こんなのを外で見かけられたら私は不自然に思われると思う。」

「……たしかに。」


つまりは“動いている彼”を“部外者”に目撃されてはいけない。


そうか、キッサテンへ向かうために、彼はそのままの姿では私と冒険を共にできないのか。うーん。


やってしまった……。


私は特に考えなく三人にキッサテンへ向かってほしいと伝えていた私。申し訳ない。

これは、無闇勝手に発進する、そして躓く。という私の悪い癖の一つだ。いや、癖というよりも習性に近い。


迷惑をかけてしまっている……。


ということで、私たちは学校の物置にて考えることになった。キッサテンに向かうための作戦を。


……なんか色んな物が積まれてたり詰まってたりしてるなぁ。これらは何に使うアイテムなのだろうか?全く検討がつかないが、使えそうなものがないか、私も協力していきたい。


そういえば、手段やサービスが無いと学校でも物品管理はこうするしかないのか……

そういう部分はラノハクトの発展具合いと比べてしまう。今この光景によって人類の歴史の途中を知れているのかもしれない──



……時間が経っていく。



この空間のせいかは分からないけれど、何も考えられない。

あー、私のせいだ。はぁー。

心がぐちゃぐちゃで纏まりがない。

過去の自分が腹立たしくて集中できない。

この星に来ても私は私のまま。しょーもない個性はやっぱり変わらなかった。


「んー。私だけなら今、外へ出ても何の問題も無いんだけどねぇ……キミにそこまで案内してもらって直接皆と話し合いたいからなぁ……」


「そうなんだろうけど……難しいよ。」


昨日までの私はこのセリフを言われる筈ではなかっただろうし、こんなことを考えなくてよかったのかな。

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