第6話 出会ったのは?

はっ!……ぁあ?


……???


眠りから覚めたような感覚が私に絡まっている。

さっきまで私は……。


なに、ここ?


……どうやらこれはラノハクトから地球へのワープが成功したらしい。今まさに。

え?え?へぇー、こんないきなりな感じなんだ。

なんとも言えない不思議な……感覚。

出発から到着まで旅路のワクワクが時間の無駄として科学の進歩により省かれてしまった。とっても残念。


そりゃワープってそういうもんだもの、しょうがないよ。


ここは?建物の屋上?

私はなんだか目立つ場所だなぁと思っていたけれど、よくわからない施設の屋上を指定していたのかな。

建物の内部を着地点に指定する方法も合ったのだろうか?

まぁいい。

数秒前までトリアンドルスの内部で呑気に座っていたはずの体を起こし、未知の星に足をつけ立ち上がる。

私ニオラス・アーベントは生まれて初めて別の星に降り立ったのだ。


空が青色だぁ!

緑やピンクなんかじゃない!

すっげぇ!本当にあったんだ!


この星に住む人々はこの色が空色なのかな……。


光が眩しい……!

こんなに眩しいのか地球……!

綺麗……!

清清しい……!

羨ましい……!


音がない……!

そりゃあ、生命体の時間の流れがめちゃめちゃゆっくりだから……ね。


どれも出発前に事前に知識があったのに、来てみるとどれもこれも想像以上。

嬉しい、楽しい。自然に笑みが溢れる。


青色の空、

眩しい光、

観たことのない景色、

澄みきった空気、

宙に静止している見知らぬ動物、

そして無音。

そんな息づく環境の様子は新しさに包まれていて、どこを切り取っても映えている。


あれも素敵、これも素敵、今の私は無敵、すぎる。


なんだろう、本当に現実なのだろうか……。

まだ一分も経っていないのに疑わしいほどだ。

ラノハクトとは違う部分も多いけれど何となく心地良さそうに感じた。いつかこの美しい星を故郷と呼びたい。


単なるノロールム人の学生である私にとってこの調査に付随した瞬間移動も時間圧延も初めての体験だった。


気温も空気も重力も他の星にしては環境は快適!流石ぁ、βだかδだかよくわからんけどすごいシステムってことだけは実感できました。


というかこんなあっさりしてるんだなぁ。なんだか不安になって損した気分。


ノーザたちはどこ……?

下の方を見ても居なさそうだけれど。


あぁそういえば先生が視認不可の小型地球基地(だっけ?)が地球の至るところに在るから端末で付近の基地の場所を確認しておけって──


ん?私の近くに誰かいる?


囚われていた世界から解放されて、ここだったら悟りを開けそうとまで思っていた中、なかなか見慣れない色の感情を受信した。それもかなり近くで。


その感情は濃い灰色だった。どういうことなのか。それは誰かに受け取ってほしそうな気がした。


とりあえず!これが初めて私がみるこの星の知的生命体、「地球人」だ!

生きている命を発見したからには話しかけてみよう!

まぁ返事なんて無いだろうけど。

いくぜぃ!


「あー?あはは、おーい。」


一瞬の印象ではあるが、その地球人と思わしき生命体は黒い髪で肌が薄橙色、我々と同じ二足歩行らしい。

ま、まぁ、知っていたけどね……。


「すいませーん、もしかしてキミ、私を認識できていますか?」

”濃縮された探求心“、”歩くピスヘル“などと呼び声が高い私は一度こういうことをしてみたかったので実行。

やぁやぁそこの地球人ご機嫌はいかが?

みたいなその程度の気楽さで──

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