第11話(終)

 あとは、ご存じの通りです。私はその場に倒れて動けなくなりました。全身の力が抜けて、立ち上がることもできず、まるで蛇のようにいつくばっていました。


 辺りから人々の悲鳴と叫び声がして、人がねられた、あの子が突き落としたと聞こえました。私の周りに色々な靴を履いた人が集まって、無理やり立たされて、ここへ連れてこられました。


 これが、私の身に起きた出来事です。あなたが話してほしいと言ったから、全て正直に答えました。これでも私が悪いのでしょうか? いいえ、分かっています。私が悪いんです。蛇神は悪事をしません。罪を問えるはずもありません。ヘビオが賽銭さいせんを持ち去ったから、私がヘビオの財布を持ち去ったから、魔が差したから、こんなことになったんです。


 私の話。信じられますか? 信じてくれるんですね。へぇ、警察の人も案外……顔? 私の顔がどうかしましたか? いえ、ふざけてなんていません。からかってなんていません。顔がなんだ? 手を離せ? どうしてそんなことを言うんですか? ずっと私は真剣に、本気でお前に訴えているんです。


 俺から盗んだ物を返せって。


 返せ。あの財布、ワニ皮の財布、中を調べたと言いましたよね? あなたもヘビオの死体から盗んだんですね? なら私と一緒です。返してください。そして罪を償ってください。


 返せ。証拠品? 現場検証? それが俺になんの関係がある? お前の罪になんの関係がある。返せ。俺の目にはお前の脅える顔が映っているぞ。俺の舌はお前の匂いをぎ取っているぞ。返せ。逃げられると思うな。地の果てまで追いかけて、お前の身をめ、首筋に食らい付き、血をすすって息の根を止めてやる。


 返せ。盗人ぬすっとには何も与えぬ。犯した罪の報いを受けよ。


 返せ。俺の怒りを思い知れ。蛇神のたたりにもだえ死ね。


(終)

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