恋慕 #野神千彩


変な人。

最初から今も、彼への印象は何も変わらない。



【よく来たな、上杉少年! 貴様を待っていた!】



ぬいぐるみは、私の仮面。

誰かに隠れることしかできなかった私は、強い仮面を手に入れた。

そこからみんな、私のことをぬいぐるみで喋る変な人だと認識してるはず。

これなら、苦手な人と話さなくてすむ、そう思っていた。


でも、その人だけは最初からまっすぐに見てくれていた。

ぬいぐるみでも、作ったキャラでもない、ありのままの私を、まっすぐに。




「私には人前で演技するのなんてできないし、向いてない……上杉が褒めてくれたから……演技のこと、声のこと……」



怖くて、いつも逃げてるばかりだった。

昔も、今も。私はずっと、あの頃から変わらない。

そんな私にとってその背中は、いつも頼もしくて隣にいるだけで暖かくて。


彼はいつも、勇気をくれる。

暖かくて、心地よい居場所を。

そんな彼に私は、何ができるんだろうー……



「上杉ってやっぱり変わってる。でもそれがいい」



くれた勇気を、返せるように。

私も大きく、強くならなきゃ。

今度は私が、上杉を支えられるようにならなきゃ。

隣にいてほしい、一緒にいてほしいと思ってもらえるように。



「待ってるね、上杉」

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