片恋 -Thoughts in the heroine-

一途 #輝夜聡寧


「そう、今のは全部演技。一瞬でも美人に告白されるなんて、いい経験になったでしょ?」



一言で言えば、出会い方は最悪だった。

角度、笑顔、視線。

どれをとっても、私は完璧に「美少女」を演じてみせた。

それでも彼は、猫被りだとみぬき、挙句に

人の告白を嘘呼ばわりして、なかったことにされて……

だから、方法を変えることにした。

彼の好きな人を、私に変えてやろうと。



「好きな人がいるなら、せめてそのサポートだけでもできないかって。あなたと会長がいい感じになれるよう、応援してあげるわ」



少しでもいい、彼のそばにいたい。

例え隣にいるのが、私でなかったとしても。

けど、それでもいつか、私だけを見て欲しい。

少しでいいから、ほんのちょっとでも気にかけて欲しい。

なんて思うのは私のエゴなのかしら。



「上杉君。あなたの好きは、本当に恋愛としての好きなの? その好きが恋愛としての意味でないとするのなら、私はー……」



わずかに見えた希望を、私は絶対に見逃さない。

だって、追いかけていたから。

私は、ずっとずっと、見ていたの。

あなたという存在を。

あなたが私を知る、ずっとずっと前から。



「本当に鈍感ね、上杉稀羅。あなた一人を必要としている人がたくさんいるって、どうして、気づかないのかしら」



例え誰かが、彼を狙っていたとしても。

あなたが誰かを好きにさせたとしても。

私は待っているわ。

あの時から、ずっとー……



「皮肉なものね。先に目を付けたのは、私なのに」


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