5.俺の、俺による、俺のための活動計画
ホワイトボードに、文字がつらつら書き出される。
なんだか講義しているみたいだ、なんて思いながら椅子に座りながらその光景を眺める。
九十九も野神もそばにあったパイプ椅子に座ってるだけで、何も言い出すことはない。
何も知らない女子3人と、男子一人というこの構図がなんとも慣れないっつうか………お、落ち着かねぇ……
「さて、上杉君。あなたには最終目標を聞いておく必要があるわね。まず、彼女とどうなりたいの?」
「どうなりたいか、って言われても……別にどーも……ぶっちゃけ今のままでもいいかなぁ、なんて」
「この期に及んでまだそんなことを言っているの? やるからには徹底的にやらなきゃ。仕方ないから私が目標を立てたわ。最終目標は小早川三星と恋人になる、よ」
こ、こここここ恋人!!?
それってつまり、てててて手をつないだりとか、休みの日にデートするとか!?
いやいやいや、そもそも俺みたいな奴じゃ会長に釣り合うわけねぇ!
「やっぱ俺降りる!! すみませんっした!!」
「おっと、そうはいかないよ」
教室のドアを塞ぐように九十九が立つ。
俺が逃げ出すと踏んでいたのだろうか、動きが素早い。
こうなりゃもう一つのドアから……と思ったが、
【ふふふ、ここから先はいかせんぞょ……】
案の定、ラビット将軍を使って話す野神が同じように塞いでいて、それもかなわなかった。
ちくしょう……なんなんだよ、この連携プレーは……
「乗りかかった船なんだし、まずはやってみようよ上杉。ただ好きで見てるだけ、なんでかっこ悪いじゃん。現に、このままじゃいけないって思ったから僕たちと手を組んだんじゃないの?」
「そ、それは……」
「上杉が3人で勉強してた時、会長は君、と言っていた。僕の読み的に認識さえされてないとみたけど、図星かな?」
こ、こいつ……あの時のことを見ていたのか……
だから俺が会長を好きって知ってるのか? にしてもどこで見て……
はっ! あの時北斗が見られてる気がするって言ってたのって、まさかこいつのことか!!?
「つまり、認識されることが第一のステップってことだよ。名前を覚えてもらうだけで、会長が君のこと呼んでくれるんだよ? それってすっごく萌える展開じゃない?」
「も、もえ……?」
「と、いうわけで、まずはポイント稼ぎから始めよっか。生徒会の活動時に、ゴミ拾いするとかっ」
うわ、めちゃくちゃ面倒臭そうなのきたな、おい……
しかも九十九の奴、誰もが嫌がりそうだとわかってるくせにすげーいい笑顔をしてやがる……
「確か、生徒会が朝の挨拶運動するのが来週からあるから、そこを狙えばいいんじゃない?」
「マジで言ってるのかよ……ていうかよく知ってるな、そーいうの……生徒会所属とか?」
「まさか。知り合いにつてがあるだけだよ」
「なら、話が早いわね。男友達でも連れて、掃除でもしてなさい」
男友達ねぇ……昴は優しいから付き合ってくれそうだが、北斗がくるかどうか……
……ってんん? 男友達??
「まさかお前ら、作戦立てるだけで実行は俺一人にやらせるのか!?」
「当たり前じゃない。私がゴミ拾いなんて、やるわけないでしょう」
「ふざけんじゃねぇよ! 協力しようっつったのはそっちだろ!? お前らもやらねぇと、ゴミ拾いなんかせずにまっすぐ帰ってやる!」
「そ、それは反則じゃ……!」
「正直、俺はこのままでもいいって思ってるんだ。そんな俺をここに連れてきたのはお前らだ、責任はちゃんととってもらうぞ!」
大丈夫、俺は間違っていない。
現に会長とは恋人になりたいだなんて、今でも一ミリも思っていない。
やるからには徹底的にと言ったのは彼女たちであり、俺ではないわけだ。
つまり、責任を問う権利は大いにあるわけで……
「ははっ、確かにそうだ。一本取られちゃったね、聡寧」
【吾輩のために頑張るのだぞ! 僕達よ!】
「なんで私だけなの。あなた達にも付き合ってもらうから、そのつもりで」
3人が次から次に言う。
こうして俺ら3人による、会長に名前を覚えてもらうための活動が今、始まったのだ!
(つづく!!)
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