第4話

保険会社の仕事に追われていた私は、子どもたちが寝た頃に帰宅、朝はまだ寝ている頃に出勤していた。

給料はそこそこいいが、2人の事を考えたら、あまり良い状況ではなかった。普段は実家に面倒みてもらい、土日はタカの野球の試合、忙しい日々を送っていた。父母はよくしてくれ、子どもたちは、不安定ながらも順調。でも(特にマナ)コミュニケーションがとれない。今さら転職先は、見つかり辛いだろう。結論…今の仕事を辞めて、前から興味のあった看護師になろう…


2015年4月、看護学校入学。

学校に行ってる間は、仕事をせずに、貯金を切り崩しながら、ゆとりの時間もあった。2人とのコミュニケーションは良好で、安定していた。

そんな中、小さいけれど、癌が見つかった。手術して、完治したけれど、病気に看護学校、子育てと色んな事が重なって、少々参っていた。

あの時の悪性かどうかを聞く時の怖さは忘れられない。血圧が、180まで上がっていた。

そして、癌と聞いた時の、頭が真っ白になった気持ちも。経験できたからこその、患者の気持ちへの寄り添い方もあるのかもしれない、とプラスに考える気持ちも今はある。

それからの私は、余計に恋愛から遠のいた。恋愛、結婚して、途中で私が死んだらどうなるのだろう。子どものことを考えると、中途半端な気持ちで恋愛したら、その後の事を考えると、ありえなかった。

ひたすら勉強し、2017年、試験に合格、看護学校を卒業し、4月から看護師として働き出すことになる。

看護学校の、実習先である患者に言われた言葉、今でも忘れない。

「あんたは、いい看護師になるよ。だから、絶対になって頑張るんだよ。」

癌患者で、余命は半年。その言葉が突き刺ささった。

優秀な実習生ではなかった。座学の方はそこそこできたが、1番の問題点は、自分で考えて行動するのに苦手意識があり、言われた事をする方が楽だと思う性格だった。実習先で思い知った。看護師は自分で考えて、行動するのが大前提(もちろん、ドクターの指示のもとにだけど)。だから、私に看護師は向いてない…ぶつかった壁。

そんな時に、私が頑張ろうと思えた言葉。患者さんが、余命わずかな中、私の看護に対して思ってくれたこと。貴重な一言。人から言われた言葉で、人は小さくも大きく変わると思う。私は、この時大きく変われた訳ではないけれど、私の芯の部分にはこの言葉があり、今もそれが生きている。

その方の思い、忘れることなく、今も私の中で生きている。

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