第445話『プレゼント送付ルール』
>>さすが女たらしのイロハ
>>両手どころか前後左右に花じゃん(米)
>>新婦大量に出てきた時点で完全にネタ配信やと思ってたけど、ガチの報告だったから脳がバグるwww
突然、4人と同時に交際をはじめたことを発表した俺に視聴者たちは大混乱だった。
それはそう。俺だって、なんでこうなったのかいまだにわかってないし。
「だけど、女たらしって……わたしそんなんじゃないからね!?」
「今さらなにを言ってるんダ?」
「まったくデスヨ。イロハサマ、散々あちこちで女の子に粉をかけまくってきたクセニ」
「イロハちゃんは間違いなく浮気症だよねぇ~」
「でも、お姉ちゃんはそんなイロハちゃんもちゃんと受け入れるよ……えへへ」
えぇっ!? みんなそういう認識だったの!?
心外なんだが!? それは断じてちがう!
>>でもまぁ、一番の花はイロハちゃん自身なんだよなぁ
>>オレもイロハちゃんと結婚したい(韓)
>>私もそのハーレムに入れてくれ(印)
「それは――」
ファンのみんなも冗談めかして結婚に混ぜてくれ、と言ってくる。
普段ならツッコミで返しているところ……だが、俺はついこう答えてしまっていた。
「それはムリかな。だって、わたしにとっては――おーぐたち
>>あら^~
>>あのイロハちゃんがデレデレだ……(米)
>>は? なにそれ最高なんだが???(独)
天使……いや、昇天の絵文字がコメント欄に滝のように流れた。
や、やめてくれ!? そんなつもりじゃ!?
というか、ないがしろにされたファンはむしろ怒れ?
なんでよろこんでるんだよ!?
『さて、では盛り上がっているところ恐縮ですが……このまま披露宴に移りたいと思います』
オヤビンのエコーがかかった声で案内される。
それから俺たちは4人で一緒にケーキに入刀したりして……。
>>そういえば4人目って絶対、アネゴの妹だよな
>>配信には出てこれない人物となると、ますます候補絞られる……というか、ほかにいないだろ(米)
>>まぁ、イロハちゃんって普通の友だちいないもんな(韓)
「ううう、うるさいわっ! 友だちくらいちゃんとおるわっ!」
た、たしかに? 昔は本当に少なかったけど……今はちゃんとたくさんの友だちがいる。
海外にも国内にも。きっと今もコメント欄の中に混ざっているだろう。
>>みんなが幸せになって本当によかった。イロハちゃん帰って来てくれてありがとう(米)
>>¥30,000 ご祝儀。みんなの幸せのために使ってくれ
>>¥50,000 お幸せにやで……!
一般的にご祝儀は2で割り切れないように3万円や5万円が渡される。
だが今回の場合、俺たちは5人だから5万だと割り切れる気がした……けど、まぁ誤差か。
「ところでイロハ、ずっと気になってたんだガ……ご祝儀ってなんダ?」
あんぐおーぐが尋ねてくる。
言われてはじめて「そうか、アメリカにはないんだっけ」と気づく。
「日本じゃ、結婚した人にみんながお金を渡すんだよ」
「ふーン、変わった文化だナ」
「言われてみると。でも、この先なにかと入り用だろうし、式や披露宴にもお金がかかるし……なにより、お祝いしたいって気持ちを形にできるからねー」
「なるほどナー。アメリカにもウェディング・レジストリがあったりするシ、似たようなものカ」
「ウェディング・レジストリ?」
「ワタシたちで言うところの『欲しいものリスト』だナ。新郎新婦側が欲しいものを公開しておいテ、招待客はその中からひとつずつプレゼントするんダ」
「へー!」
なるほど、すごく合理的かもしれない。
現金を直接渡すより生々しくないし、それでいてきちんと結婚生活の助けになる。
ただ、どちらの国にも結婚式の贈りものには共通している部分があると俺は思った。
それは――自分でプレゼントを選ぶ必要がないことだ。
もしかしたら、みんな思ってることは同じなのかも。
プレゼント選びって……めちゃくちゃ大変だよね!? と。
いらないものを渡してしまったり、運悪くほかの人と被ってしまったり……。
そもそもあまり親しくない会社の上司とかが相手で、なに贈っていいかわからないこともあったり。
>>その仕組み、誕生日プレゼントとかにも欲しいわ
>>↑俺も。プレゼントいっつも迷うんだよなぁ……
>>というか、イロハちゃんやおーぐたちにプレゼント贈りたい
「うーン。気持ちはすごくうれしいんだガ、それはなかなか難しいナ」
「おーぐの
「個人的には復活させて欲しいんだガ……現実的にはなかなか厳しそうダ。ありがたい話だけどプレゼントの数が膨大デ、チェックの人手がどうしても足りなくなるかラ」
「かといって安全性を考えるとチェックしないわけにもいかないし」
「そうそウ。スマートタグとカ……いろいろあったからナ」
「AWAZONとかECサイトから直送されているものならセーフだったのが、今はもう懐かしい。はぁ~、またおーぐにプレゼント贈りたいなぁ」
「そうだナ。……うン???」
>>そうだな。……うん?
>>……?(米)
>>直接渡せばいいのでは???(宇)
「いやいや、わたしはおーぐに渡したいんじゃなくてあんぐおーぐに渡したいの!」
「一緒だガ!? 同一人物だガ!?」
「全然ちがう! それじゃあ友だちとしてのプレゼントになっちゃうでしょ!? ファンとして贈りたいの!」
「ハぁ~、ったくオマエは相変わらず……。でもひとつだけ訂正があるゾ」
「なに?」
「『友だち』じゃなくテ、今はもウ――『恋人』だロ?」
「~~~~っ!? あうあうあう……!?」
自分の顔が一瞬で真っ赤になったのがわかった。
うまく言葉が出てこなくなる。
「あ~っ!? イロハちゃんとおーぐがふたりっきりの空気作ってる~っ! お姉ちゃんも混ーぜてっ」
「なに抜け駆けしてるのデスカ!?」
「ふ、ふたりもそういうこと言わなくていいからっ!?」
「ちなみにイロハサマもだいたい同じ理由でプレゼントの受け取りを停止していマスガ……逆に言えば手紙なら送れマス! ナノデ、ワタシと一緒にファンレターを書きマショウ!」
「それが一番だナ。ワタシもこれまでもらった手紙には全部目を通してるシ、ひとつ残らず大切に保管してル。配信者にとってはなによりの原動力だからナ。ツラくなったときに読み返したリ」
「と、ところでっ……手紙といえば”祝電”が届いているんじゃなかったっけ!?」
だんだんとムズがゆくなってきた俺は、そう大きな声を出した――。
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