閑話25『”賭け”ゲーム~第10ラウンド~』


「おーぐサンを倒せる方法? マサカ、この状況からデスカ!?」


「そのとおり」


「おおお、オイ!? イロハ! ナニ言ってるんダ!? そんな方法あるわけないだロ!」


「ふーん、おーぐは信じないんだ?」


「あ、当たり前ダ! だいたイ、本当にそんなものがあるならとっくに使っているハズだロ!」


「たしかに。わたしも本当はもっと早い段階で使いたかったんだけどね。ちょっと準備に手間取っちゃって。みんな、待たせちゃってごめんね」


「ムググっ!? ……い、いヤ! 仮ニ、万が一、そんな方法があったとしてモ、すでに勝敗は決まってるんダ! 放っておいたら勝てるのニ、協力するヤツなんテ……!」


「イロハサマ! ワタシは当然、協力いたシマス!」


「ウっ、そうだっタ!? イリェーナはそうしなきゃ負け確だったナ。けド、ほかのヤツらハ」


「ほーん、ええやん。それ、めっちゃおもろいなー。うちも協力するで」


「なんデー!?」


「そら、あんだけ天狗になっとったらなー。鼻っ柱を折ってみたくもなるわ」


「わてもわても! おーぐさんに『ギャフン』って言わせたい!」


「おもしろそうだから、お姉ちゃんも協力したげる姉ぇ~っ☆」


「おおお、オマエらー!?」


 いやー、日ごろの行いって大切だよねー。

 あとはやっぱり、なんだかんだ言ってみんな配信者だから。


 理由なんて結局は後付けで、本当のところは……そういうさがだから、なのだろう。

 おもしろそうなことや撮れ高に引き寄せられてしまうのだ。


「フンっ! いいだろウ! そこまで言うなラ……やれるもんなラ、やってみロ! どうセ、最後に勝つのはワタシだろうけどナ!」


 そうしてゲームは次のステージへと移行する。

 個人戦から、あんぐおーぐvs.他プレイヤーというチーム戦へ。


「っと、このラウンドはもう制限時間だね。勝負は第10ラウンド以降かな」


「これは、熱い展開になってきましたよ~!」


 姫殿下がそう、ウッキウキの声で叫んでいた――。


   *  *  *


「第9ラウンドの結果は以下になります。さぁ、ここからどうなるのか……!?」


 ・ベット枚数

  1枚:イリーシャ、錬丹術師

  2枚:オルトロス

  3枚:イロハ

  4枚:アネゴ

  5枚:おーぐ


 ・所持チップ

  おーぐ  ……25枚

  アネゴ  ……21枚

  イロハ  ……19枚

  オルトロス……19枚

  錬丹術師 ……16枚

  イリーシャ……15枚


 第9ラウンドはオルトロスが説明した必勝法のとおりになった。

 最下位ふたりのチップが1枚ずつ減る。仮に、これが続けばイリェーナの負けだが……。


「で、イロハはん。おーぐはんを倒す秘策っていうのは?」


「じゃあ、順番に密談用のボイスチャンネルに来てもらっていいですか? わたしずっとオルトロスさんとふたりっきりでおしゃべりしたくって。……めちゃくちゃファンでっ!」


「あっはっは! ええよええよー」


「イロハサマ!? ず、ズルいデス! ワタシのときはダメって言っタノニ~!」


「そうだゾ! そんな私用に使うなんテ!?」


「なんで額面どおりに受け取ってるの。あくまで今のは方言……じゃなかった、方便だからね?」


「デモ、イロハサマでスシ」「けド、イロハだシ」


「うぐっ!? ま、まぁ半分……いや、7、8……9割くらい? 『推しと合法的に話せるチャンス!』っていう気持ちもなくはなかったけど」


「イロハサマ~!?」


「やっパ、そっちが本命じゃねーカ!?」


 本来なら推しと言葉を交わそうだなんて、いちファンとしてはライン越えの行為。

 だって、壁は言葉を話さないから。耳はあれど口はないから。


 しかし、今回は必要なことなのでセーフ!

 そりゃあ、やる気も出るってもんよ!


「ほな、ちょっとイロハはんとふたりっきりになってくるわー」


「わてのオルちゃんがイロハさんに取られてまう~!? でも、なんだろうこの気持ち……ちょっと興奮する。ハッ!? これがネトラレ!?」


「あのっ!? 順番に全員と密談するのでっ!」


「はぅっ!? つまり、わても狙われてるっ……てコト!?」


「ちっがーう!?」


 そんなこんなで俺はあんぐおーぐを除くすべてのプレイヤーと密談した。

 それが終わるころには、もう第10ラウンドも制限時間ギリギリで……。


「イロハ、遅いゾ! いつまで待たせるんダ!」


「ごめんごめん」


 密談用のボイスチャンネルから戻ると、あんぐおーぐにそう言われてしまう。

 そういえば、彼女はラウンドが開始と同時にベットを済ませているんだもんな。


 待ちぼうけになってしまったか。

 しかし、配信者である彼女たちのこと。盛り上がる雑談で場を繋いでくれたことだろう。


「このラウンドだけじゃなイ。前の前のラウンドも遅かったシ。今回なんてベットする場所は決まってるんだかラ、そんなに時間はかからないだろうガ」


「ごめんって。今、ベットしたから」


「……はい、全員のベットが確認できました。では、第10ラウンドの結果を発表いたします!」


「マぁ、結果なんてわかりきってるけどナ!」


「ベット枚数は、以下のようになりました!」


 ・ベット枚数

  1枚:イリーシャ

  2枚:錬丹術師

  3枚:オルトロス

  4枚:イロハ

  5枚:アネゴ、おーぐ


「当然、最下位のふたりが被っテ……ハァあああ~~~~!? ななな、なんで最下位じゃなくテ最上位・・・のワタシたちが被ってるんダー!?」


「それによって現在の所持チップは、以下のようになります」


 ・所持チップ

  おーぐ  ……20枚

  イロハ  ……19枚

  オルトロス……19枚

  アネゴ  ……16枚

  錬丹術師 ……16枚

  イリーシャ……15枚


「い、いったいなにを考えてるんだアネゴ!? オマエ、負けたいのカ!?」


「えーっと、てへっ☆ お姉ちゃん、間違えちった!」


「このおバカぁーーーーっ!」


 あんぐおーぐの叫びがこだまする。

 そんなあー姉ぇの”うっかり”が作戦開始の合図だった――!

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