第349話『いっぱいいっぱい! わたし元気!』


《あ、あの……おーぐ? 怖いんだけど!? ちょ、ちょっとーっ!?》


 俺は抵抗しようとしたが、あっさり力負けしてしまう。

 あんぐおーぐがのしかかってくる。


《フガフガっ!》


《ぎゃーっ!? こらぁーっ、やめいっ!?》


 あんぐおーぐ俺の胸元に顔をうずめ、こすりつけてくる。

 さらに「あーん」と大口を開け……。


《ぱくっ! あむあむ……!》


《ひゃう、んッ!? ちょっ……変なとこむなーっ!?》


 服ごし胸元を口に含んで、あむあむしてくる。

 さらには、スルリと服の裾から彼女の手が侵入してきて……。


《な、なにしてるの!? ダメだって! それは本当にダメだから!?》


 慌ててあんぐおーぐの手を掴んで、それ以上の進行を食い止めようとする。

 だが、強引にそのまま……。


《あひゃっ!? んっ、あんっ……ダメ、くすぐったいから! それぇっ!》


 あんぐおーぐの手のひらが俺の素肌に触れていた。

 やわらかくて、細くて、小さくて……そして、気持ちのいい彼女の五指がいろんなところを撫でたり、揉みしだいたりしてくる。


《はぁ、はぁっ……んんんぅっ!? ダメ、だからぁっ! それぇっ……あんんんぅっ!》


 だんだんと俺の息もあがってくる。

 なぜだかすこし涙も滲んでいた。感情のコントロールがきかない。


 しかし、あんぐおーぐが服の裾に手をかけたことに気づき、「ハッ」と我に返った。

 こ、これ以上は本当にマズい!?


《なに脱がそうとしてるの!? おーぐ落ち着いて! ほ、ほら。もう冬だし! 寒いから、ね? だから、この先はもう……!》


《イロハ……悪い・・


 しかし、あんぐおーぐは聞く耳を持ってくれなかった。

 ガバっ! と一気に首元まで服をたくしあげられる。


 素肌が完全にあらわになって……恥ずかしさでカァ~っと自分の顔が熱くなる。

 一緒にお風呂に入っているし、お互いの裸は知っている。けれど、これはいつものソレとはちがう!?


《なっ、こらっ……あうっ!?》


 慌てて胸元を手で隠そうとするが、腕を掴まれてしまう。

 そのままバンザイするみたいに頭の上で押さえつけられ、これ以上の抵抗を封じられる。


《ハァハァ……イロハ、かわいいぞ》


《や、やだぁ……恥ずかしいから、見ないでぇ。うひゃっ!? 息が当たって、くすぐった……!? あの、おーぐ? 本当にしたり、しないよね? それはさすがにライン越えっていうか》


《言っただろ、「イロハ悪い」って。あんなポーズで素肌を見せて、ワタシを誘惑するから! ワタシはずっとガマンしてたのに! けど、もう限界だ》


《へぁっ!? 「悪い」ってそういう意味!? ま、待っ……!?》



《――ちぅ~~~~!》



《~~~~!?!?!?》


 それからたっぷり1時間、俺はあんぐおーぐにおっぱいを堪能された。

 俺は心底から思った。


 もうだれかを煽ったり、イタズラを仕掛けるのはやめよう、と。

 あるいは、やるにしても内容には気をつけよう、と――。


   *  *  *


 俺たちはエッチなことなんて微塵もしてない。

 だって、あれは授乳だから! むしろ健全で健康的な行為だから!


 なんて脳内で言い訳をしていると……。

 「フフフ」とどこか恐ろしい笑いが電話越しに聞こえてきた。


『もしかしてイロハちゃんぅ~、マイとおしゃべり中なのにほかの女のこと考えてるぅ~?』


「ひぇっ!? ななな、なんで!?」


『「なんで」? やっぱり考えてたんだぁ~っ!?』


「あっ、いや!? 今のは、その!?」


 俺は自室でマイからの電話を受けていた。

 なんでもさっきの赤ちゃん配信を見て、いてもたってもいられなくなったとか。


 というか、そっか。あの配信みんなに見られてたんだよな。

 うが~!? もし、母親にまで見られていたならASMRの二の舞だ!?


『みんな楽しそうでよかったねぇ~? ……本当に、ねぇ~?』


「ひぃっ!? ち、ちがうよ!? ひとりだけのけ者にしたわけじゃなくてね!?」


『わかってるよぉ~。マイはVTuberじゃないからぁ~。けどぉ~、それでもぉ~……みんなだけズルいぃいいい~! ズルい、ズルい、ズルいぃいいい~!』


「赤ちゃんかっ!? ダダこねないで!? お願いだから、落ち着いて!」


 なんで一日にこんなにもたくさん、大きな赤んぼうの面倒を見なくちゃいけないんだ!?

 さすがに、もうママ役は勘弁……。


『じゃあイロハちゃんぅ~。今すぐおしゃぶりを咥えて、マイにも赤ちゃんみたいに甘えてくれるぅ~?』


 ちがった、俺が赤んぼうの側だった。

 けれど地獄には変わりない。それにおしゃぶりを咥えるとまた俺は……。


『してくれないのぉ~? ズルぅううう――』


「わ、わかった! わかったから!? やればいいんでしょ!?」


『ホントぉ~? やったぁ~!』


「こ、こいつ」


 圧に負けて、了承してしまう。

 しかし、幸いにも今は自室にひとり。マイ以外に聞かれる心配はない。


 というか、俺があんぐおーぐをたたき出したんだけどな!

 あんなことして、本当にやりすぎだバカ! それに、さすがに俺も当分は彼女の顔をまっすぐ見られそうになかったし。


『イロハちゃんぅ~? もしかしてまたぁ~……』


「準備できたから! ほら、じゃあいくよ!」


 俺は誤魔化すように言って、ソレを咥えた

 そして「ええい、まま・・よっ!」と、わざと音を立てるように吸った。



「――ちゅぱっ、ちゅぱっ」



『きゃぁ~! イロハちゃん、ママでちゅよぉ~? いっぱい甘やかしてあげまちゅからねぇ~!』


 そのちゅぱ音にマイは大興奮した様子で叫んでいた――。

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