第342話『VTuberにオギャりたい!』

《だいたい、なにこのラインナップ!?》


 言いながら俺は、アドベントカレンダーから出てきたもの指差した。

 1日目から順に、哺乳瓶のキャップ、よだれかけ、それからおしゃぶり……って、ヒドすぎる!


《おーぐはわたしをいったいなんだと思ってるの!? 赤ちゃんグッズって!?》


《チッチッチ、イロハ! それはちがうぞ!》


《なにもちがわないでしょ!?》


《いや、たしかに今は幼児向けばかりだが、これからすこしずつ対象年齢が上がっていく予定なんだ》


《???》


《1日目は1歳まで、2日目は2歳まで……と、それぞれの数字の年齢まで使えそうなものを入れてあるんだ! つまり、最後は24歳まで長く使えそうなものが入っているぞ!》


《じゃあ、9日目なら9歳で使えそうなもの……たとえば防犯ブザーが入っている、みたいな話?》


《おっ、するどいな! いや~、この前アネゴが来てたとき、オマエひとりで寝ちゃっただろ? そのときふたりでしゃべっていて思いついたんだが、じつに天才的なアイデアだな!》


《あー姉ぇ、またキサマが原因かぁーっ!?》


《しかし不思議だなー。どうしてミンナこれをやらないんだろうなー?》


《本当にねーっ!?》


 約95パーセントの確率でいらないものが入っているアドベントカレンダー。

 アイデアそのものはおもしろいと思うが、実際にもらうとなると迷惑でしかねぇ!?


《こんなの使い道がないし……》


《と、言うと思って、すでにそのための企画も用意してあるぞ!》


《いらないいらない!? ごめん、わたしが悪かったから!? 使い道ないままでいいから! というか、おーぐもわたしも今ただでさえ忙しい時期なのに、そんなアホな企画に割く時間なんて……》


《え? でも、ほかのVTuberにも声かけてて、イロハ以外からはもうオーケーをもらってるんだが》


《本当になにやってるのー!? そんなこと言ったってわたしは絶対にやらないからね!? 絶対だから! 絶対の絶対にやらないからー!》


 俺はそうはっきりとあんぐおーぐに否を返し……。


   *  *  *


「というわけで今日は赤ちゃん企画だゾ! ”ぐるるる……どーもゾンビでス”。あんぐおーぐでス!」


「うぅっ、わたしは絶対・・に赤ちゃんじゃないのに。”わたしの言葉よあなたに届け”……翻訳少女イロハです」


>>やぁ、おーぐ!(米)

>>イロハロ~

>>いや、イロハちゃんはメイビーでもなくベイビーだろwww


 俺はこの”赤ちゃん企画”に参加させられていた。

 昨日の今日だった。即オチ2コマかな?


 でも仕方ないじゃん!?

 根回しが済んでいたらしく、知らないうちにマイがスケジュールに組み込んでいたし、なにより……。


「”みんな元気ぃ〜? みんなのお姉ちゃんだヨっ☆” 姉ヶ崎あねがさきモネでーすっ☆ いや~、今日は神回になる予感がする姉ぇ~!」


「地獄になる予感しかないが!?」


>>アネゴ好きだぁあああ!

>>今回の企画はおーぐとアネゴふたりのアイデアなんだっけ?

>>イロハちゃんwがんばれwww


 この企画にはあー姉ぇも1枚噛んでいた。

 であれば、逃げられるはずもない。俺の運命はすでに決まっていた。


 まぁ、正直アドベントカレンダーの時点でだいぶ怪しいとは思っていたが。

 そして、もうひとり運命の糸に絡められた人物が……。


「”ドーブロホ・ランコ!” みなサン、こんニチハ……イリェーナ、デス! 今日はイロハサマの赤ちゃんプレイが拝めると聞イテ、やってきマシタ! ドウゾ、よろしくお願いシマス!」


>>どーぶろほ・らんこ!

>>オレもイロハママにオギャれると聞いてやってきました

>>あれ? そういえばこの4人でコラボするってはじめてか?


「そう! だからこそ呼んだの! あたし、イリーシャちゃんとは初絡みなんだよ姉ぇ~。もちろん、裏では何度もお話してるんだけど。イロハちゃんの秘蔵写真をやりとりしたり」


「その説はお世話になりマシタ。にシテモ……アぁっ、大好きなイロハサマとのコラボ、幸せデス!」


「ムっ、イロハのことならワタシだッテ!」


「お姉ちゃんもイロハちゃんのこと大好きだよ~?」


>>秘蔵写真だって!? その話をkwsk

>>ちょっと見せたまえ

>>赤ちゃん回に見せかけた”イロハーレム”回でござったかw


「それ採用で! ぜひぜひみんなも、ハッシュタグつけて宣伝しておいて姉ぇ~!」


「変なユニット名を採用しないで!? というか、その話はもういいでしょ!?」


「まぁ、第一婦人であるお姉ちゃん的には~」


「イヤ、第一婦人はワタシだガ?」


「なにをおっしゃっているのデスカ? ワタシに決まってイマス!」


「勝手に正妻戦争をはじめないで!? 話を進めるよ! この企画って具体的になにするの?」


「よくぞ聞いてくれました! 内容は至ってシンプル! ズバリ……みんなで赤ちゃん役とママ役を交代しながら”プレイ”して一番の赤ちゃんを決めよう! という企画です!」


「やっぱり地獄企画じゃねーか!?」


「それで、最初はだれから赤ちゃんする~?」


「マぁ、イロハが赤ちゃん役なのは確定としテ……当然、ワタシは大人のレディーだからママ役だな!」


「というわけで、最初はイロハちゃんとおーぐが赤ちゃんで決定ぇ~いっ! そして、あたしとイリェーナちゃんがママ役だ姉ぇ~」


「なゼー!?」


「わ、ワタシがイロハサマのママ……!? ヒャッホォウウウ! ぜひお任せくだサイ!」


「ダレカタスケテ……」


 そうして地獄の赤ちゃん企画が……。

 はじめての、俺たち4人でのコラボがはじまった――!



 すごく記念すべき回な気がするんだけど、本当にこんな内容でいいのぉおおお!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る