第327話『言語習得とカバー率』
<”わたしの言葉よあなたに届け”! 翻訳少女イロハです!>
<”ドーブロホ・ランコ!” イリェーナです!>
<というわけで、今日はふたりで語学配信をやっていきたいと思います>
<キャァアアア~! イロハサマとのコラボ配信、幸せすぎます!>
>>イロハロー!
>>おはよう、イリーシャ!(宇)
>>イリーシャ、イロハちゃんとのコラボだから最初からテンションがMAXだなwww(宇)
というわけで、予定していたイリェーナとのコラボ配信が開始されていた。
それと目的の都合上、ウクライナ語の成分多めでお送りだ。
<語学の中でも、今日は『習得』について重点をおいて話していければなー、と思ってます>
これまでも言語の習熟に関して配信上で話したことはある。
しかし、そのときは『学校英語』がメインで『実践英語』についてはあまり深堀りしていなかった。
そういう意味では、今回の配信は俺としてもちょうどよかったかも。
<ただなぁー。わたしは習得に関しては一瞬で覚えられちゃうからなー。知識は提供できても実体験はなー>
>>くっそコイツw煽りやがってwww(宇)
>>このチート幼女め!(宇)
>>これだから天才はwww(宇)
<そのためにワタシがいるのです! 苦労話から楽しかった話までたくさん取り揃えていますよー!>
<じゃあ、せっかくだしイリェーナちゃんの話をベースに話を進めていこうかな?>
<ですね!>
と、イリェーナからは実体験を、俺からは知識を提供することになる。
まぁ、事前に打ち合わせていた流れなんだけどな!
<ではまず、言語を習得するために必要なものについて。これは以前イロハサマもおっしゃられていましたが、”必要性”だと思います>
<ふむ>
<あるいは目的や目標と言い換えても構わないと、ワタシは思いますが。いずれにせよ外国語を学ぶにはたくさんの”労力”を要しますから、理由がなければ気力も続きません>
<わた――>
<イロハサマはべつとして>
<まだなにも言ってないのに>
>>草(宇)
>>まぁ、イロハちゃんは外国語を覚えるの一瞬だからなw(宇)
>>あきらかなはずれ値は除外してもろて(宇)
<わたしも「推しのために”必要”だから言語を習得してる」って言おうとしただけなんだけど>
<あっ。す、スイマセン!?>
>>そっちかいwww(宇)
>>すまんwww完全に「お前には聞いてねーよ!」ってツッコむ気マンマンだったわw(宇)
>>たしかに、イロハちゃんべつに勉強好きなタイプじゃないもんね(宇)
<その、話を戻しますと……この配信のきっかけとなった「言葉がわからないから”はこつく”をプレイできない」という理由の場合。はっきり言います。学ぶなら――日本語より英語にすべきです!>
<あれーっ!? てっきり今日、日本語とウクライナ語の話だと思ってたんだけど!?>
<いえ、だって日本語はあきらかに習得の難易度が高いですから! まぁ、ワタシがいうのもなんですが>
>>たしかにwww(宇)
>>それに英語なら普通にこっちの学校でも学べるし(宇)
>>文法的にも英語のほうが、まだしも近いもんなぁ(宇)
<そっかー、そうだよねー。言語の習得難易度の基準っていろいろあるけど……今、コメントであった母語に近いかどうかとか。あとは語彙の”カバー率”とか。いずれにしても日本語は難しいよね>
<カバー率?>
>>事務所の話でしょ?(宇)
>>知ってる知ってるw(宇)
>>いやー、わかる話でホッとしたぜ!(宇)
<大正解!>
<イロハサマ!?>
<……ハっ!? 危ない危ない。みんながVTuberの話をするから、つい丸をあげたくなっちゃった>
>>この教師役チョロいぞ(宇)
>>イロハ先生に教えてもらいたい人生だった(宇)
>>もしイロハちゃんが学校の先生になったら、テスト用紙の裏にファンアート書いておけば満点くれそう
<うん、あげちゃうあげちゃう!>
<イロハサマぁ~っ!?>
<ごめんごめん。じゃあイリェーナちゃんもオススメしてる英語で、ちょっとたとえ話をしてもいい?>
<はい、構いません。というか、ワタシも日本の学校で英語を学んでいる身ですし。多くのウクライナ人も日本人と同じように学校で英語を学んでいますから>
<ありがとう。多分、イリェーナちゃんならわかると思うんだけど……学校英語とはちがって、実践英語ではそこまでの『文法の正確さ』や『語彙の多さ』って重視されないよね?>
<たしかに。ワタシも国際イベントに出演する関係で、英語でやりとりすることもあるのですが、どちらかというと『慣れ』のほうが大事だと感じます>
<だよね。テストのリスニングならできたのに、実際の会話だと全然だったり>
<ありますあります!>
<英語の場合、発音の省略とか変化がめちゃくちゃ多いことなんかが、原因なんだけど>
>>なるほど、それでか
>>英語とかヨユーって調子に乗りながらアメリカ旅行したら、痛い目見たわ
>>日本もウクライナも英語教育で抱える問題って似てるっぽい?(宇)
<でも、実際に使われてる単語の数はそこまで多くないんだよね。そこで、さっきのカバー率の話>
<結局、それってどういう意味なのですか?>
<使用率の高い順番に単語を並べたとき、上位何単語を覚えたらその言語における会話をどれくらいカバーできるか……わかるようになるか、を調べた値だね>
<なるほど。言語によって必要となる単語の数も変わってきますもんね>
<そうそう。ここで問題! 英語を8割がた理解しようとした場合……カバー率を80%にするには何単語、覚える必要があるでしょうか?>
俺はひとつ、イリェーナや視聴者へ向けてクイズを出した。
彼女はうーんと考えて、自身の考えを述べる。
<ええっと、あんまり多くないって言ってましたよね? じゃあ6000……いや、4000とか!>
<おしい! 正解は……>
<――たったの”1000語”>
<えぇえええ!? そ、そんなに少ないのですか!?>
そう、たったそれだけでいいのだ――。
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