第280話『メンバーシップギフト爆撃』
>>あれ? なんかぼくの文字、緑色になってる?
>>メンギフスナイプってマジ!?
>>確率すごっ!?
メンバーシップギフトとは、メンバーシップを購入して他者にプレゼントできるMyTubeの機能だ。
贈り先は、その配信の視聴者からランダムに選ばれる……はず、なのだが。
>>同接数から計算して……何分の1の確率だこれ!?
>>間違いなく、ガチャで最高レア引くよりも確率低いだろwww
>>イロハちゃんもちょっと、運分けてもらったら?
「余計なお世話だよ! けど、こんなこともあるんだねぇ」
リアルタイムで配信を見ている人だけに訪れる幸運。
ライブ感やコメントでの一体感を楽しめるほかにも、”生”にはこんな特典があるのだ。
ブランドアカウント……いわゆる子アカウントじゃ受け取れないだとか、ギフトの受け取り許可が必要とか。
多少の注意はあるが、だれでもメンバーを体験できる可能性がある。
>>あれ? そういえばスパチャはオフになってても、メンギフは贈れるのか
>>自分がメンバーになるのは1度きりだけど、メンギフなら何度でも……(米)
>>閃・い・た!!!!
「あっ」
>>スパチャがないなら、メンギフを投げればいいじゃない!
>>『20件のIroha Ch.翻訳少女イロハのメンバーシップギフトを贈りました』
>>『灰になった人さんへアンドロ目玉さんからメンバーシップギフトが贈られました』
「ちょっ!? 20件ってそれもうほぼ赤スパだから!?」
メンバーシップギフトは複数、まとめて贈ることが可能だ。
そして、その最大数は……。
>>『50件のIroha Ch.翻訳少女イロハのメンバーシップギフトを贈りました』
>>↑50件とかヤバwww
>>『ペンギン^^さんへポンポン狸さんからメンバーシップギフトが贈られました』
「ぎゃぁ~~~~!? みんな、待って!? ストップスト~ップ!」
>>メンギフは止まらねぇぞ!
>>『10件のIroha Ch.翻訳少女イロハのメンバーシップギフトを贈りました』
>>『スキアーさんへ白猫さんからメンバーシップギフトが贈られました』
>>祭りの時間だぁ~!
>>ヒャッホー! これを待っていたんだ!(米)
>>『Mertoさんへレイモンさんからメンバーシップギフトが贈られました』
「お、お願いだから止まって~~~~っ!?」
メンバーシップギフトはスーパーチャットとはちがって、とっさにオフするみたいなことが難しい。
あっという間にその数は増していき……。
「ひぃっ!? あ、あのね、この配信中に何人がメンバーになってくれたか確認することができるんだけど……その数が、すごいことになってる!? もう十分! 十分だから!?」
>>ん? それはつまり、ガチャを引くってことOK?
>>弾も用意できたことだしな
>>『ダダダ饅頭さんへうなばら村長さんからメンバーシップギフトが贈られました』
「え!? それは、その……でも、お母さんが」
>>『50件のIroha Ch.翻訳少女イロハのメンバーシップギフトを贈りました』
>>『50件のIroha Ch.翻訳少女イロハのメンバーシップギフトを贈りました』
>>『猫吸いさんへえむえむさんからメンバーシップギフトが贈られました』
「わかった! わかったから~!? 上限メンギフ配るのやめて!? 引く! 引きます! あー姉ぇが完凸するまで引きますからぁ~!?」
>>堕ちたなwww(韓)
>>言質取ったぞ
>>これでもう逃げられないねぇ?
「き、きっと大丈夫。すぐにあー姉ぇを引いちゃえばいいんだよ。お母さんに気づかれる前に配信を終えちゃえば、なにも問題は……ひぃっ!?」
>>おっ? これはイロハハから着信来たかな?
>>お母さん、イロハちゃんが課金するよりもたくさんメンギフ投げるので安心してください!
>>まさか今さら、やっぱりナシなんて言わないよね?
「こ、こんのっやればいいんでしょ、やれば!? あとがわたしがどうなるかも知らないで~!」
>>よく言った! それでこそイロハちゃんだ!(米)
>>今だ! メンギフを投げろ、投げろ、投げまくれー!
>>『ふぁ~~~さんへYamata大蛇さんからメンバーシップギフトが贈られました』
俺は半泣きになりながら、ガチャを回した。
ずっと着信を告げているスマートフォンから目を逸らしながら。
しかし、肝心のあー姉ぇがなかなか引けない。
一方でメンバーシップギフトはすさまじい勢いで投げられ続けて……。
>>相変わらずの運の悪さで草
>>『雨風黒猫さんへおかのしたさんからメンバーシップギフトが贈られました』
>>イロハのために、腎臓をひとつ売ってメンギフを投げるよ!(米)
「売らなくていい! 腎臓なんていらないから!? みんなの
>>2個ある腎臓よりも、1個しかない心臓をよこせだって!?
>>イロハちゃん、なんて強欲な子!
>>要求されたからには仕方ない、心臓を売ってくるよ(米)
「そういう意味じゃなーい!?」
と、そんなやり取りをしていると、コメント欄がざわつきはじめる。
同時に、ピタッと『新規メンバー』数の伸びが止まった。
>>あれ? メンバーシップギフト投げたけど、だれにも届いてない気がする(韓)
>>本当だ、俺も。なんでだ?
>>あ、わかったこれ……投げるヤツが多すぎて、受け取るヤツが足りてねぇんだ!?
「は、はいぃいいいっ!? そんなことってある!?」
>>同接数エグいのに、これでメンギフ余るとかお前らどれだけ投げたんだよwww
>>つまり今、この配信見てる人のほぼ全員がメンバーなのか
>>コメント欄が緑一色で大草原
>>だれか、あとでメンギフ数のカウント動画出してくれ(米)
>>クソッ! なんで、メンバーシップって1回しか入れないんだ!?
>>おい、お前ら! 急いで新しいファン連れて来い!
「い、いや……人がいないなら、もうムリして投げなくてもいいなじゃないかなーって」
>>『クロシスさんへインド太郎さんからメンバーシップギフトが贈られました』
>>おっ、新しい人が入って来た?
>>宣伝して来たぞ! リア友やフォロワーに片っ端から声かけてきた!
>>みんなも、もっとたくさんエッキスとかで宣伝してこい!
>>↑トゥイッターだるろぉおおおん!?
>>↑エッキスなんて名前知らない! オレたちのトゥイッターは永遠なんだ!
「お願いだから早く来て、あー姉ぇえええ~っ!」
それから、あー姉ぇが完凸するまではしばらくの時間を要した。
最終的に『新規メンバー』は……いや、俺は数えるのをやめた。
この配信はトレンド1位を取るだけでなく、いくつものネットニュースになった。
そして『伝説のメンシ配信』としてVTuber史にその名を刻んだのであった――。
* * *
『というわけでワケデぇ↑、ワ↑タシとコラボしてほしいんですネぇ↑ ……同じ、スパチャ芸人としテぇ↑』
「わたしはスパチャ芸人じゃないが!?」
とあるVTuberからコラボを持ち掛けられたのは、その翌日のこと。
そして、具体的にどんな配信をしたいのかと問うと……。
『ぜひ一緒ニぃ↑――”下ネタで学ぶ外国語”という配信をしてほしいんですネぇ↑』
……な、なんじゃそりゃー!?
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