第157話『絵文字の発祥』
《言われてみると、すごいアンバランスだな》
《ちょっと前までは現金至上主義、みたいな感じも強かった。ご飯食べたけどカード使えない、とか》
最近はキャッシュレスも増えたが、それでもまだそういった店は多い。
ロボットが配膳する飲食店も増えている中、これじゃあチグハグと言われても反論できない。
>>住んでみると、良い面だけじゃなく悪い面も見えてくるもんだなぁ(米)
>>じゃあ、もうアメリカに戻りたい感じ?(米)
>>べつにムリして日本に留まることもないんじゃない?(米)
《いや。ワタシが言いたいのは、どんな国にも良いところと悪いところがあるってだけ。あとは向き不向きの話だな。言っただろ? 日本はVTuberにとって天国だって》
向き不向き、か。
これは国にかぎったことじゃない。仕事や人付き合いも同じだ。
すべてが良いなんてことも、すべてが悪いなんてことも、ありえない。
必ず、良い部分と悪い部分の両方が存在する。
その中で、自分がどんなところにより魅力を感じるのか。
あるいは、どんなツラさなら”許容”できるのか。
そんな『向き不向き』を見極めるのが、なにかを選択するときの重要なファクターとなる。
相手を変えるのは難しいけれど、相手を選べる場面ってのは意外と多いのだから。
《それに! 日本だとコミックなんかも超安いし、早く手に入るからな!》
《そういえば、おーぐってヲタクだった》
《おいイロハ。これは、ほんとに切実なんだぞ! アメリカだと日本のコミックって1冊12ドルとかするんだからな!? 日本換算だと1600エンくらいだぞ!?》
うげっ!? それは本当に高いな!?
日本だと3冊は買えそうな金額だ。
《多分、翻訳とかライセンスとかで余計にお金がかかるんだと思うが、さすがに高すぎる! しかも発売が半年遅れとかなんだぞ!? あるいは、そもそも手に入らなかったり!》
《なるほど》
《それなら日本語を覚えて、原作を最速かつ元値で買ったほうが圧倒的におトク。ワタシが日本語を覚えた理由のひとつには、そういうのも含まれてる》
海外のヲタクもかなりの苦労をしているようだ。
その結果が今のあんぐおーぐなのだとしたら、愛の……いや、ヲタクパワーはすごい。
《最近のアニメについては、字幕版や吹き替え版がほとんど日本と変わらないタイミングで放送されるようになったけどな。ちなみにワタシは字幕派だ》
>>俺も字幕で見てる(米)
>>吹き替えは口パクが気持ち悪くてムリ(米)
>>日本だと吹き替えで見る人が多いんだけどな
《へ~。こういうところにもお国柄って出るもんなんだな》
>>日本とアメリカのちがい、なかなかおもしろいな(米)
>>イロハがアメリカに来るときが楽しみだ(米)
>>そういえば、ご飯ってどんなの食べたの?(米)
《ワタシ、プリン! コンビニで買ったんだけど、すごくおいしかった!》
《お菓子じゃねーか!》
《い、いいんだよ》
>>アメリカのプディングとなにかちがうの?(米)
>>”プッチン”するんだよ
>>アニメで見たことあるわ(米)
《そうそう。お皿にひっくり返して食べるの。アメリカのプリンってドロドロでしょ? 日本のはゼリーみたいにプルプルしてるんだよ。絵文字にもなってるよ》
>>見た目はむしろ”フラン”に近いよね(米)
>>あの絵文字ってプリンだったのか(米)
>>絵文字は日本発祥だから、日本のものが多いんだよ(米)
《え? そうなの? あ~、そういえば。これも最近、コンビニで買って食べたんだけど。”オセンベイ”も絵文字があるよね。ワタシもずっと、焼いた”オニギリ”だと思ってたんだけど》
>>俺は全焼したカマクラだと思ってた(米)
>>となりに白いのが並んでるから、余計にそう見えるwww(米)
>>多少、日本を知ってたらそっちはすぐ”オニギリ”ってわかるけどな(米)
《へぇ~》
俺もコメント欄やあんぐおーぐの話を聞いていて、感心してしまう。
絵文字に関する解釈も、海外とは大きな差があるんだな。
日本にしかないものや、日本特有のジェスチャーなど。
話を聞いていると、ほかにもいろいろと誤解があるようだった。
両手で大きな丸を作っているのが、バレリーナに見えていたり。
土下座しているのが、腕立て伏せに見えていたり。
ほかにもアニメチックな演出とかも、人によっては伝わらないらしい。
眠って鼻ちょうちんを作っているのが、涙を流しているように見えていたり。
怒りマークに至ってはナゾすぎる、と。
「地獄への入り口?」というコメントには思わず笑ってしまった。
《逆に、日本では普通に使われてる絵文字だけど、ワタシたちが見たらヒヤッとするものもあるけどな》
《ん? どういうこと?》
《あっ、イヤ!?》
>>おい、なに言おうとした!?(米)
>>相手は未成年やぞwww(米)
>>[ナスの絵文字][汗の絵文字]
《今の絵文字コメントしたヤツ、ブロックしたからな!?》
《なぁ、今のって》
《聞くな! イロハは知らなくていいことだから!》
あんぐおーぐはアタフタと手を振って、誤魔化した。
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