第55話『地上波デビュー!?』
「というわけで入学式に参加してきました。翻訳少女イロハでーす」
>>イロハロー
>>イロハちゃんもこれでJCかぁ……なんか感慨深いな
>>ボクは今、娘の成長を見届けた父親の気分だよ(米)
「お前らの娘ではねーよ? けどそのとおり、中学生になったんだよね。いやー、時の流れは早い」
>>正直、小学生ブランドなくなったのは惜しいな
>>??? イロハちゃんは永遠の小学生やぞ???
>>ロリコンだ! 捕まえろ!
「あはは。たしかにねー。けどバーチャルの世界では月日が経つごとに、技術の進歩やバージョンアップが起こる。VTuberたちはより美しい声に、よりかわいい外見になっていく。時間はわたしたちの味方なんだよ」
>>彼女はとても良いことを言った(米)
>>そもそも永遠の17歳がいるような世界やしな
>>昭和歌謡祭を開く17歳とは……うごご
「ちなみに、みんなは入学や入社、新学期の調子はどんな感じ?」
>>高校デビューでイメチェンしたから、そのうちクラスメイトが声かけてくれると思う!
>>研修中やけど社会人チョロいわwww
>>あっ、こいつら……
「なんか死亡フラグが乱立してる気がするけど、まー大丈夫大丈夫。ツラいことがあってもVTuberの配信見てりゃ治るから」
>>それはお前だけだwww
>>イロハちゃんにいつも癒されてます!
>>中学校生活どんな感じ?
「いや、聞いてよ! それがさぁ……超ヤヴァい! 今日、教科書渡されたり授業スケジュールを伝えられたりしたんだけど、めちゃくちゃハードでさー」
>>やっぱりそうなのか
>>ゆーてイロハちゃんなら余裕やろ
>>授業めっちゃ早いらしいな
「そうそう。なんでも科目によっては中学1年生のうちに、中学校の授業範囲がほぼ終わるらしい。難関中学ってみんなこんなカリキュラムなの?」
>>マジで!? えっぐ……
>>難関の中高一貫校、特有やな
>>ゆーて英語は余裕やろ
「それが、そうでもなさそうなんだよね。そもそも英語しゃべれる人って珍しくないし。ウチの学校には、帰国子女もそれなりの人数いるから」
>>ひえー、マジか!
>>なんか世界がちがうって感じ
>>帰国子女の人らって英語の授業、退屈になったりせんのかな?
「あー、そこは大丈夫みたい。英語の授業は成績でクラス分けされるんだってさ。とくに最上位クラスはネイティブの先生が、アメリカの大学受験に通用するレベルまで鍛えてくれるらしいよ」
>>えっ、イロハはアメリカの大学に来るのかい!?(米)
>>これは留学フラグ?
>>つーか当然のように最上位クラスなんかいwww
「不思議ダナー、ナンデワタシナンカガ最上位クラスナンダロウナー。アメリカへの進学は今のところ考えてないねー」
>>そんだけ英語できると、海外進学しないってほうが違和感あるな
>>進路決めるのはイロハちゃん自身やからね
>>アメリカの大学受験に通用する英語、ってどんなことするんだろう?
「わたしもまだ詳しくは把握してないけど、最終的には全員がTOEFL iBTで100点以上取るのを目指すんだってさ。あとはディスカッションとかエッセイライティングとかディベートとか」
>>TOEFLなんちゃら100点ってどのくらいの難易度なんや?
>>英検1級以上やな
>>アメリカの有名大学を受験しようとしたら必須なんやっけ
「そうそれ! 先生が言ってた!」
>>それでも試験問題くらいイロハちゃんなら読めそうやけど
>>読めるのと理解できるのはちゃうからなぁ
>>半分、専門用語に片足突っ込んでるほどの語彙力が必要やからな
「そうそう。みんなだって、絵本を読むのは簡単だけど、論文は読むの苦労するでしょ? 日本語で書いてあっても。そんなもんだよ」
>>難関中学って大変なんだなー
まったくもって同感だった。
いやはや、これからついていけるのか心配だ……。
* * *
と思っていたのだが、中学校の授業がはじまって数日。
意外なことに勉強は順調だった。
よくよく考えてみれば俺は、中学の授業も受けるのは2度目だ。
復習として考えれば今のペースがほどよくさえあった。小学校のときはむしろ退屈で仕方なかったからなぁ。
一部、俺の時代にはやらなかった範囲などが授業に組み込まれていたりして、そこだけはあっぷあっぷになったりもしていたが。それ以外は驚くほどなんとかなっていた。
……なお、あくまでそれは”ついていける”のレベルで、だ。
全体としては間違いなく、落ちこぼれ寄りだろう。
まぁそれでも、授業時間以外の自習もほとんどせず”ほどほど”をキープしているわけで。
こんなことを言ったら、塾にも行って必死に授業に食らいついている
ただし――英語の授業はべつだ。
英語授業の初日、意外な再会があった。
《やぁ、イロハ! キミのことはよく覚えてるよ! ボクのことを覚えているかい? 受験のとき、キミの面接を担当していたんだけれど》
《お久しぶりです。その節はありがとうございました》
《キミなら必ず合格できると思っていたよ。もっと偏差値の高い学校に取られないか心配だったけどねっ。さて、それじゃあ今日はまず、みんなの今のレベルを測るためにも一度テストを受けてみようか》
偶然にも、英語の担任が受験のときの試験官だったのだ。
それ自体はよかったのだが……授業開始から1、2週間が経ったころ、それは起こった。
* * *
《イロハ、よかったらキミ、テレビに出てみないかい?》
《……はい?》
唐突に、英語の担任にそんなことを言われた。
まったく意味がわからない。
《いや、先日の受けてもらったテストの成績がすばらしくてね。中学1年生のこの時期で、しかも留学や海外生活の経験なしでこの点数はものすごく珍しいんだ》
《はぁ。それで、なぜそれがテレビの話に?》
《じつは居酒屋で「こんなユニークな生徒がいるんだよ」って友人に話していたら、それが回りまわってテレビ局の人の耳に入ったらしくてね。ぜひ取材させてほしいって連絡が来たんだよ》
《なっ、なぁああああああ!?》
《もちろんキミの意思を尊重するよ。先方にはまだキミの名前すら伝えていない。けれどよかったら引き受けてみないかい? もしかしたらキミの人生が変わるかもしれないよ?》
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