第10話『VTuber学力テスト』


「それでは本日、司会進行役を務めさせていただきます、現役教師VTuberの――」


>>きちゃあああ!

>>待ってた!

>>メンバー豪華すぎてヤバい


「この配信は『答え合わせ編』となっておりますので、もし並走したい場合は先に各ライバーの『テスト編』を見てからのご視聴をオススメいたします。それでは今回、テストに参加いただいたライバーのみなさんにあいさつしていただきましょう! まずは――」


 まるで学校の教室のような背景に、机と椅子のイラスト。

 それぞれの机に、まるで座っているかのようにライバーが配置されていた。


 ライバーたちが順番に、いつものあいさつのフレーズと意気込みを述べていく。


「次は――」


「”みんな元気ぃ〜? みんなのお姉ちゃんだヨっ☆” 姉ヶ崎モネでーすっ☆」


>>アネゴ好きだぁあああ!

>>アネゴ好きだぁああああ!

>>アネゴ好きだぁあああああ!


「いやぁ~、今日はあたしの天才的な頭脳をお披露目しちゃう姉ぇっ☆ イロハちゃんをボコボコに泣かせて大人の威厳を見せつけてやるぜっ!」


>>なんで自信満々なんだよw

>>(ある意味)天才的

>>泣き見るのはどっちやろなぁ?


「そして最後は、今回の企画立案をしてくれた現役女子小学生VTuber!」


「”わたしの言葉よあなたに届け!” 翻訳少女イロハでーす。うわっ、なんでこんなに有名ライバー集まってるの!? あっやべ、興奮で鼻血出てきた」


>>え、ガチで鼻血?

>>大丈夫!?!?!?

>>相変わらずのVTuberヲタクで草


「えっ、あーっとイロハさんが鼻血出ちゃったみたいなのでしばしお待ちを。その間に今回の企画について説明させていただきます。そもそもの発端は――」


 うわぁ、ヤバいヤバい! みんなに迷惑かけてる!?

 慌てて鼻にティッシュを詰め込み、鼻声になりながら配信に復帰する。


「――っと、イロハさんも戻って来たみたいですね。では英語圏向けの説明をイロハさんにしていただき……いよいよ、答え合わせやっていきましょう! 最初の教科は――」


 そんなこんなで答え合わせは進んでいった。

 予想外に大規模化したイベント。


 しかもこの人数、個性的なVTuberばかりだ。

 当然のように、うるさいくらいにぎやかな配信となる。


「理科の問題をイラストで解答してるやつがいるぞ!?」


「あっれー!? あたし、てっきり美術のテストだと……」


>>アネゴぇ…

>>しかも片っ端から間違ってんの草

>>絵だけはくっそウマいから余計にシュールwww


 とか。


「算数の問題だっつってんだろ! 三角関数使ってるやつだれだ!?」


「すいません。それ、わたしです……」


>>イロハちゃん、キミ小学生だよね!?!?!?

>>おい大人ライバーども負けてんぞwww

>>解けすらしなかったライバーは反省してもろて


 とか。


「この中に、社会科のテストにVTuberを登場させたアホがいます」


「えっ!? 鎌倉幕府作ったのってオヤビンじゃなかったっけ!?」


>>アネゴぇぇ……

>>なんでその時代にVTuberがいんだよ!www

>>小学校からやりなおせ!www


 とか。


「この漢字の問題、なんと! 正解者がひとりもいませんでした! わかってる? これ小学生の国語だからね!? お前ら、普段パソコンが変換してくれるからってサボってんじゃねーぞ!」


「「「サーセン」」」


>>草

>>VTuber全員、漢字に弱い説

>>俺も耳が痛ぇwww


 とか。


「あの、この英文って不正解なんですか?」


「イロハちゃんの解答ですが、ぼくでは正誤判定ができず、知り合いの英語教師に相談してきました。結果、本場での口語としては正しいものの、今回は中学受験なので不正解という判定になりました」


>>そんなパターンあんのか

>>不正解の理由が特殊すぎるwww

>>たしかに知り合いの帰国子女も英語80点しか取れてなかったりするわ


 とか。


 そんな感じで、終始トラブルを巻き起こしながら配信は進んでいった。

 そして……。


「これにて全教科の採点が終了しました。というわけで、結果発っ表~! まずは準優勝からいきましょう。今回、見事に第2位を獲得したのは――」


 順番に名前が読み上げられていき、ライバーが一喜一憂する。

 ん? あれ? 俺の名前がいつまでも呼ばれないんだが……。


「ではブービー賞まで発表が終わり、残るはふたり。すなわち、どちらかが優勝、どちらかが最下位ということです。第1回VTuber学力テスト優勝の栄冠を手にしたのは――翻訳少女イロハさんです! おめでとうございます!」


「うぇぇぇえええっ!? なんでわたしぃいいいっ!?」


「そして最下位! 『おバカ』の称号を手にしたのは姉ヶ崎モネだぁ~!」


「うぇぇぇえええっ!? なんであたしぃいいいっ!?」


「なお教科ごとの順位は――」


 みんなの点数が画面に表示される。

 えっ、ウソ!? いやいやいや、みんなヒドいな!?


 俺はこのテストを全然解けなかった。

 だからこそわざと手を抜いたりもしなかった。


 これなら普通にやっても負けると思っていたのだ。

 しかし、それ以上にほかのライバーたちが解けていなかったらしい。


 もちろん、大喜利に走ったメンバーが多かったのもある。

 だが、それ以上に問題そのものが難しかったようだ。


 ちなみに優勝したとはいえ、俺と2位とでそこまで点差があったわけではない。

 それでも俺が勝ったのは現役だからだろう。ここ1ヶ月マジメに勉強していたのが地味に効いたようだ。


>>全員ボロボロで草

>>これはしゃーない(ただしアネゴは除く)

>>ワイもやったけどガチで難しかったぞ


>>中学受験って学校によっちゃ大学入試レベルの問題も出るんやっけ?

>>ぶっちゃけ俺も、全然解けなかった

>>俺はほぼ満点取れたけどな


 そんなこんなでVTuber学力テストは終了した。

 おバカの称号を獲得したあー姉ぇは、延々と「そんなバカなあたしが最下位なハズはきっと採点ミス」とブー垂れていたが、みんなにスルーされていた。


 一方、優勝した俺なのだが。

 あれー? この配信って「やっぱり厳しいねー」と親に中学受験を諦めさせるのが目的だったんじゃ?


「イロハ、あんたやっぱり受験しな!」


 案の定、そう親に言われてしまった。

 こんなはずでは~!?

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