第10話 美少女転校生あらわる
小学五年生の春、ほたるのクラスに転校生がやってきた。
新学期のクラス替えでさなえちゃんとも、ももちゃんとも離れてしまったほたるは、ショックで呆然としながらぼうっと席に座っていた。そんなほたるの耳に『転校生』が来ると風の噂が届いて、ちょっとウキウキする。転校生って、くじ引きとかガチャガチャに似たワクワクがある。
ガラガラ~と、教室の扉が開いて、担任の先生と転校生が現れた。
(うわ、綺麗な子~)
黒板に、白いチョークで先生が大きく名前を書く。
橘 紗良。たちばな、さら。
名前までビューティフル。
都会からやってきた転校生は、都会的な美少女だった。
「よろしくお願いします」
切れ長の瞳がさっとクラスを見つめ、賢そうな唇から凛とした声が発せられた。
長く艶やかな黒髪がお辞儀と一緒にさらさらとこぼれ落ちる。彼女の仕草にクラスの男子がぽっくり口を開けて魅入っていた。
橘さんはひょろりと手足が長くて、胸のあたりがほんの少し膨らんでいた。中学生と見間違えるほど、全てが成熟した女子だった。
「やだぁ、男子ったら。鼻血流しそうな顔しちゃって」
前の席の桜井さんが「やらしいと思わない?」と、後ろの席のほたるを振り返り「きゃあ!」と声を上げた。
「?」
どうしたんだろうと思った瞬間、鉄の味がした。
「先生! 深山ほたるさんが鼻血出してます!」
桜井さんは、ぴしっと真っすぐ手を挙げてクラス中に響く声で言ったのだった。
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