第8話 まさか!? 人間も油断できなかった!?

 教室にゲッソりした様子で入ると、


「銀嶺さん!!? 華鈴さん!!?」


 と、後ろの山城姉弟に驚きの声が上がった。


 二人共Aクラスの妖怪なんだから当然かな?


 すると、人間の男子生徒が前髪をかき分けながら近寄ってきた。


「華鈴さん。 ジャンクフードもいいですが……。」


 と、値踏みする目で平太をバカにし、華鈴にはとびきり笑顔で


「最近、イタリアンのレストランを見つけて……一緒にどうです?」


 と誘ってきた。


 ん!? あれ!?


 この臭い!! あいつの匂いじゃっ!!!


 オラのこと封印したインチキ山伏!!!!!


 あ……、いや……(500年も経ってるんだから)その子孫!!!!


 何でこんな所にいるだべか!?!?!?


 あの山伏!

 御札だけは本物じゃったが、あれの霊力は無かったはずじゃっ!!


「おやおや、そんなみっともなく睨まないで、貴方の御主人様を取るわけじゃないんですよ?」


 と、更に馬鹿にしてくる。


「ねぇ……イタリアンならこないだ一軒買ったところだから間に合ってるのよね〜。」


 と、華鈴が平太にすり寄って言った。


「でも……、」


 インチキ山伏(の子孫)が食い下がろうとするが、


「そうだっ!!!」


 と、華鈴が塞ぎ、


「デート行こう!! 落とすとか、口説くとかやったことないけどぉ、最初はデートだって人間の娘が言ってたから、デート行こうデート♡」


「え……あの……デート? お俺と?」


 うんうんと首を縦にする。万一でも受け入れるであろう、という圧がのしかかる。


 犯されるかもしれない相手と?


「あの……えっと……ちょっと……行きたく……。」


“ない”と言おうとした平太は、華鈴と目があった。すると……。


 背筋に氷を入れられたように悪寒が走る。


 目が、弧を描いているのに、笑ってない……。


「ワンコちゃん?」


「は……い。」


 耳元で華鈴が囁いた。


「聞き分けの良くない子はぁ、今から皆にぃ、情けなくて恥ずかしいカッコ見られながらぁ、たっぷり食べてあげてもいいんだけどな♡」


 いつの間にか、間合いを詰められ、あらぬ所を撫でられ、シャツのボタンが2つも外されている。


 ぎゃーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!


「い行きます行きますデート!!! 喜んで行きますぅ!!!!!」


 平太はそう答えながら、ガタガタ震え教室の隅に避難した。


 因みに銀嶺さんは、華鈴の放った呪詛により、両手足を、磁石のように互いに引っ付けられていた。


 何という早業。怖い。怖すぎる。


「じゃぁ、日曜日にねぇ♪♪」


 こうして、華鈴は、呪詛にかけたままの弟を引きずりながら去っていった。


 遠くで銀嶺の”姉さーん!!💢“と、いう声が響いている。


 そして、


「調子に乗るなよ!?」


 と、インチキ山伏の子孫が吐き捨てた。


 これを聞いて、平太はイラッとした。


 腹上死するかもしれない相手と! 番いたいなら勝手にすればいいのに!!!


 第一俺はっ……! 平和に暮らしたいっ!!


 どうしよう日曜日……。


 どうやって身を守れば……。


 鬱々と授業を受け、気づけば昼休み。


 スーパーの惣菜を詰めた弁当を出し、席で飯を喰おうとしていた時、


「あのぅ……。」


 髪を2つにくくった、か弱そうな少女が声をかけてきた。


 俺は、警戒した。前のこともある。妖怪が化けてる可能性だって十分あるのだ。


「よ用事は?」


 聞き方が随分刺々しくなってしまった。しかし、


「あ、びっくりさせてごめんね? 私、千影里菜ちかげりな。人間なの。ウチは代々霊力の強い家系らしくて、ここに通ってるんだけど……。Aクラスの子達って皆手段を選ばないから、怖いよね?」


「う、うん。」


「良かったら少し話さない?」


 そうして昼飯を喰いながら少し話した。


「私、代々霊力が高い家系だって言ったでしょ? お陰で跡継ぎ以外は皆妖怪や、有名な呪術師とかに嫁入りするのが当たり前? 絶対みたいな感じで、このご時世なのに、限られた中で相手を見つけなきゃいけなくて……。でも、結婚……したくないなって。」


「しなかったら、どうなるんだべか?」


 この世界では、女も学さえ積んで、それなりに努力すれば一人で十分やっていける稼ぎが得られる。

 しかし、簡単ではないと、アルズ・ブート・キャンプで知っている。


 思えば、自分のおっかぁも酷い苦労をしているのだ。


「うん。わかんない。でも、妖怪とかにバレたら…………。」


「そっかぁ。苦労するだなぁ。」


「それなら、ソクバッキーじゃない強い妖怪とか、呪術師とか、そういう相手探した方が良いかな。」


「お前ぇさんは、めんこいでぇ、えぇ連れ合い見つかるよ。」


「そうかな? なんか安在君と喋ってるとおじいちゃんと話してるみたいで、ホッとするよね?」


「あー。封印されてた分引いても、オラァもう五十路も過ぎてるでぇ。」


「へーっ! 凄い! いつまでも見た目が若いなんて、羨ましいかも……。」


 と、そんな感じで、彼女、千影里菜とはそれなりに仲良くなった。


 やっと友達ができた~♪♪


 と、喜んでいたのだが、後にえらい目に合うのだ。




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