第6話 過激な初めまして
「それでは、皆さんに転校生を紹介します! 半妖の、安在平太君です!」
「よろしくお願いいたします。」
パチパチ……。
と、まばらな拍手で迎えられた平太。
平太は今日から1年Cクラスに入ることになった。
季節は初夏、窓から見える桜は青葉が瑞々しい。
平太は鼻から息を吸って、吐いて、風の匂い、草の匂い、チョークの匂い……そして、
なぜだろう?
何かこう……怪しげな匂いが少し漂う……。
クラクラする感じの……。
出発前、ジャックさんが山籠りしちゃったんで、代わりにお世話になることになった、妖狐の銀嶺さんに、手渡されたマスクをつけた。
銀嶺さんは、この学園の二年生で委員会メンバーなのだとか。
今日も、委員会の会議があるらしく皆より朝早く登校していった。(一緒に行きたかったのに、ちょっと残念。)
それで、このマスクをもらったときに言われたのが……。
「このマスクだけど、なんかクラクラするなって思ったらつけてね?」
「クラクラ?」
「そう。フェロモンを嗅いじゃってる可能性があるから。」
「フェロモンなんて普段から出すものですか?」
「そういうわけじゃないんだけど、妖怪女子って、種族によってはちょっと意識を傾けただけで出てしまうのもあるんで、一応用心のために。」
「それから、人間受けは低姿勢のほうが受けがいいんですけど、妖怪女子と接する場合は無愛想なくらのほうがいいと思います。」
? 何で???
平太が首を傾げると、銀嶺さんは、
「あー……えと。妖怪女性の習性というか、妖怪女性は基本、隷属させたがる傾向があるでしょ? 配下を作るというか……。ですから、不要なトラブルを生まないために、隷属しませんっていう意思表示を行ったほうがいいと思います。特にAクラスの子達には。」
「Aクラス……。若年妖怪で一番強いのが集まるクラスだな~。」
「そう! 平太さんはCクラスなんで、大丈夫だとは思うんですが……。」
「はぁ。」
と、そんな感じでマスクを受け取ったわけである。
まさか、最初からそんな目に合うとは……。
令和日本とはいえ、妖怪の巣窟!
気をつけないと!!
平太は両頬を叩いて気合を入れた。
そして、つつがなく一時間目を終え、休み時間。
「あのー……。」
後から声をかけられた。
振り返ってみれば、眼鏡のおかっぱの少女がいた。彼女はモジモジしながら
「クラス委員の春風詩織です。狸の妖怪でして、校内の案内を……。」
と、申し出てくれたので
「ありがとう。俺は犬の妖怪なんだ。」
ありがたく受けた。
この時、銀嶺さんの忠告を俺はすっかり忘れていた。
そして、構内を色々案内してもらって最後、保健室に入った途端、
カチャッ……。
鍵を占める音が、
俺は慌てて振り返り彼女を見た。すると、むせ返るフェロモンに襲われ、立っていられなくなった。
「ふぅぅっ………! な、何で?」
「うふふふふっ。おバカな子犬ちゃん。」
彼女はそう言うと、メガネを取り、短かった髪が瞬く間に、シルバーロングヘアになった。
臭いも、さっきまで狸だったのに、狐になった。
な何されるんだろう……?
戦々恐々と彼女を見つめていると、
「こーゆー無理矢理感嫌いじゃないけどー……。床の上は冷たいのよねぇ。」
そう言って、いとも簡単に念動力を使って平太を宙に浮かせベッドに投げた。
「わふっ……! ちょっと……何を……!?」
と、平太が起き上がろうとすると、股の間を割って彼女がズイッと迫ってきた。
長いまつげ、大きな目、餅のような白くて滑らかな肌。それにフェロモン……。
平太は目を回して気絶しそうだ。
「あ! そうそう、コレとっちゃうわね? 私、尻尾と耳ついてる方が萌えるから!」
と、イヤリング型の変身機を取られた。すると、耳と尻尾がニョキッと現れた。
「ニャンコは気まぐれで躾が大変だしぃ、犬! 欲しかったのよね!」
と満面の笑みの狐美少女。
一方平太は状況の理解が追いつかず頭の中は「?」の嵐だった。
そして、気づけば、ズボンもパンツも取られ下半身が露出している。
「もー……。萎え萎えじゃなーい。これから味見するところだったのにぃ。」
味見!!!??? 何の!?!?!?
その時、バンっと勢いよく扉が開いて、
「姉さん!!! 何やってるんですか!!??」
と、銀嶺さんが息を切らしてやって来た。
「アラ銀嶺。何って、新しいペットの見極めと調教を……。」
「昼間っから学校で!!! 第一! 絶対合意の上じゃないでしょ!?!? これ以上被害者増やさないでください!!!」
「被害者ですって!? ペットは皆まんべんなく可愛がってるわよー。」
「ウソつけぇぇ!!! アンタのは好き放題ヤリタイ放題でしょうが!!! 狸の一年瀕死にしたのだってアンタでしょう??!!」
瀕死!?!?!?!?!?
「た……助けて銀嶺さん!!!!!!!!」
平太は涙目で力の限り助けを求めた。
平太は生徒会室でショックのあまり、椅子の上で膝を抱えてちんまりと座った。
「すいません。僕の説明不足でした。」
銀嶺は深々と頭を下げた。
「あ……いえ。その……アレは一体何だったんですか???」
「そのー、オブラートに包みすぎましたね。ちゃんと説明します。
えーと。妖怪女性、上位妖怪に限ったことなんですが、妖怪は男女差ってないでしょう? 種族によっては女性の方が圧倒的に強いくらいですし……。
それで、昔は、強い子孫を作るために、より強い妖怪を求めてカップリングしていましたが、近代の妖怪学で、実は人間の血を何代かに一度入れたほうが妖力が強くなったり、稀な能力に恵まれることが判ったんです。
だから、妖怪女性にとって、強い子供を生むことは一族の覇権を握る鍵になりますから、昔と違って半妖は、妖怪の婚活市場では結構人気なんです。
で、今は、人間同士の結婚は重婚は禁止になってますが、妖怪は逆で、重婚の方を奨励してます。
理由は……そのー…………パートナーの衰弱死を防ぐため……です。」
「衰弱死?」
「ああのー……やっぱり妖怪と半妖では体力差がありますし、行為中に生気や妖力を吸われたりしたら……。持たないでしょ?」
「……なんか……ペットって……。」
「あぁ……ソレは……。えーと……ステータスっとでも言いましょうか……。パートナーが多いほど見栄えがいいというか……。立場的に……そういうのを好むのって、上昇志向の強い上位妖怪女性になるので……男性の立場が圧倒的に弱くなったりするっていうか……。」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?
「つまり……俺の貞操が危ない? 妖怪女子には、冷たい態度の方がいいっていうのは……。」
銀嶺は黙ってうなずいた。
なんてこった!!!
平和な日常が良かったのに!!!!
平太は白目向いて倒れそうになった。
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