第5話 夢の? ハイスクールライフ!!

 時が経つのは早いもので、

 僕、安在平太は、

 ついに! 今日! 学校へ行きます!


「私立三協高校……。」


 5日前ジャックさんに高校のパンフレットを貰った。


「そうッス! ここに通います。」


「あ……そう言えば、平太さんはいくつでしたっけ? 見た目的にはタメっぽいスけど……。」


 平太は指を折りながら数えた。

 自分の歳なんて気にしてなかったから、ついつい忘れてしまう。


「あぁ。俺は、えぇと、おっ母ぁ看取って……五年だから……五十一歳かな。」


「えぇっ!?!? 平太さんヴァンパイアみたい!! 見た目若っ!!」


「ヴァンパイア……。」


 なぜだろう? その例え、嬉しくない。


「良いなー。羨ましいなー。僕、先生になって学校に行っちゃおうかなー?」


 と、いきなりアルさんが……。


 ガタガタっガタンッ……!!


 僕もジャックさんもビックして、後ろに仰け反り、危うく椅子から落ちかけた。


「びっ……ビックリした!! アルさん!! いきなり後ろから現れないでください!! つーか、アンタ平太さんに接近禁止命令下ってたでしょ!?」


「あー。ゴメンね☆ 嵐壊クン♡ テヘペロ♪」


 と言って、アルさんはパチリとウィンクした。全く謝意が伝わらない。


 て言うか、荼吉尼さんと別の意味で……


 怖いっ!!!!!!!!!


 僕は机の後ろに隠れるように下がった。


「ヤダー☆ もー☆ そんなに警戒しないでぇ? 目的も果たしたし、もうやらないから♡」


 え? 全然安心できない。


 なのに瞬間移動のようにアルさん僕の前にシュッと現れて


「それはそうと名前変えたんだって? なんてーの??」


 僕、怖くて腰抜かして尻餅付いた。上ずった声で答える。


「安在平太でしっ……。」


 って、噛んだぁ! 恥ずかしい!!


「安在平太クンね! わー! いいねぇ↑↑ that's平凡な名前!! 実にキミらしい!!」


 とサムズアップをするアルさん。しかし、


 褒めてる???


 と、過分に疑問符がついたのは、平太だけではなかった。


「まー。荼吉尼さんに見つからないうちに、退散した方がいいですよ? 多目的ホールがスクラップの山と化しちゃいますから……(マジで)。」


 と、ジャックが忠告した。すると、


「それなら心配ご無用さ!! 荼吉尼チャンのボディーラインが崩れてないか、今しがたチェックしてきたとこなんだ♪」


「…………………。」


 僕たちは失意体前屈をした。

 今すぐ逃げなければ、羅刹とかした荼吉尼さんがっ……!!!


 もうヤダこのヒト!!!


 すると、


「あっ。いたいた。」


 真っ白なスーツを着た、スラッとした男性が現れた。


 かっカッコいい……。


「探しましたよ。アルさん! て言うか……アンタまた荼吉尼さんにセクハラ働いたでしょう!? 今日はたまたま僕いたんで、彼女止めてきましたけど……。」


 男性はサラッと言った。


「だ……荼吉尼さんを止めたぁぁぁ!!??」


 平太は顎が外れるかと思うほど驚いた。


「あー……。ビックリしますよねぇ。バーサク状態の荼吉尼さん、止めてきたんでしょうから……。この人、閻魔庁お出迎え課の死神で、木蓮さんです。」


「閻魔庁?」


「そーそー。荼吉尼さんの元部下なんですよね?」


「まーねー。あの時の荼吉尼さんも……業務過多で殺気だってたんで、慣れたっていうね……。」


 と、木蓮さん遠い目をした。きっと数々の修羅場をくぐってきたのだろう……。


「でも、人事配置見直しで、荼吉尼さんは妖怪の管理・統括のみが業務になったから、大分業務が圧縮されたんだよ? 前はお出迎え課課長も兼任してたから、激務も激務。あの人も大分穏やかになりましたよ(アルさんがセクハラ働かなきゃね……)。」


「末尾の()内に異議あり〜! Boo!」


 アルさんが口を尖らせた。


「まぁ、確かに、激烈に仲の悪かった技術部隊のドワーフ、グレムリンの仲を取り持って、板挟みになってた鉄鼠達を救ったのは大きな功績ですよ? お陰で、怪しげな道具による事故は減りましたし……。現場の仕事もしやすくなりました。」


「でしょうー!? もっと僕の対人スキルを評価してもらいたいね!!」


 アルさんは腕組みをして大威張りだけれども、周りはジト目で見ている。


「それはそうと、木蓮さん今日は?」


「あぁ。黒服が最近発見した悪霊の回収にね。」


「黒服?」


 どっかで聞いたような? と、平太は小首を傾げた。


「あぁ。ワークスワームでインストールしきれなかったんですね?」


 ジャックが説明しようとすると、木蓮さんが平太を見て言った。


「あれ? 彼もしかして……。」


「そうッス。封印されてた妖怪で、世界最古の生き残りの、安在平太さんです。」


「はじめまして……。」


 平太は頭を掻きながら挨拶した。


「そうか、五百年でしたよね? 僕や荼吉尼さんや真祖のヴァンパイアのアルさんみたいな不老不死でも、五百年は結構前に感じますもの。」


「え……えぇぇっ!!! 不老不死!?」


 凄い!! 神様の覚えすらめでたい天上人!!


 平太は思わず手を合わせた。


「だからそんなにカッコいいんですね!?」


 と言ったら、木蓮さんから目をそらされた。

 すると、アルさんがブフッと吹き出し、


「ウンウン。わかるよ。カッコいいよね!! ドンペリがっぽがぽ入っちゃうよね☆」


「やめてくださいアルさん! 最近やっと慣れたのに……。オレまで……ブフっ……!」


 ジャックまで吹き出した。

 なんだろう? と不思議に思ってると……。


「僕だって! ○リーチみたいな黒死装が良かったですよ!! 黒服が先に黒のスーツ導入しちゃったから! “じゃぁ我々は、白で!”みたいになっちゃって!! しょうがないじゃないですか!!」


 と、木蓮さんは赤面して言った。


「え……凄くカッコいいのに……。」


 と、平太は不思議そうに木蓮を見た。すると、


「そんな純粋な目で言われると……なんか辛い……。」


 と、木蓮さんは胸をおさえた。

 このビミョーな空気ジャックは何とかしようと話題を変えた。


「そう言えば〜っ! 黒服の説明まだでしたよね?」


「え……はい。」


「黒服は通称で、正式名称は“妖協連、治安実動部隊”です。妖怪の逮捕権を持つ警備隊で、制服が黒スーツなんで、通称“黒服”と呼ばれているッス!」


「へぇー。カッコいいですね!!」


「フフッ! 因みにっすけど、俺は“黒服”の訓練生でもあるんッスよ!!」


「すごい!!」


 と、平太が感嘆していると、アルさんがすかさず、


「まぁ訓練生だけどね……。」


「待機命令ばっかで走り込みばっかりだけど……だよ。立派な。」


 と、ダメ押ししてきた。


「何なんですか!?!? 訓練生訓練生って!! 俺だってこないだの現場で頑張りましたよ!?」


「重機の代わりに車運んでくれたねぇ〜! 偉い偉い。」


「ムッカー!! 俺は成長期なんです! 伸び盛りなんですよ!? その内アルさんだって抜くかもしれませんからねっ!!??」


「ほうーっ。僕を抜くと? いいこと聞いちゃった☆ 早速ゴリ鬼クンに訓練強化をお願いしとこっ!! 僕を抜くってんだから相当だよ!? 気合い入れなきゃねぇぇ♡」


 と、アルさんはニヤニヤと何処かへ消えた。

 ヤーメーテーっ!!!と悶絶するジャックを残して、


「あぁ……俺、ヤッテモタ……ヲワタ……。」


 ジャックは真っ白な灰となった。


「全くあのヒトは……。ジャック君? 僕から紅煉ぐれんさんには言っとくから……どこまで聞くかわかんないけど……。」


「いいンすよ木蓮さん……。あの人、漢の中の漢を生きてる人ッスから……、さっきの話吹き込まれた時点で終わりッス。」


 今度は木蓮が重くなった場の空気を変えるべく話題を変えた。


「あ、あーっ! そうだっ! 平太君これから高校に通うんだよね~?」


「は、はい……。」


 平太はジャックを気にした。ジャックはまだ灰のままである。


「三協高校に通うのかなー?」


「はい。そうです。」


「人間のコ達も通ってるから、いい経験になるよ〜。」


「え!? 人間も!?」


「まぁ、業界のコ達ばっかりだけど……。理解のある人達しか基本来ないから、友達もできると思うよ?」


「友達……。」


 平太は今まで友達がいたことがない。

 人目や妖怪を忍んで生きてきたのだからしょうがないのだが……。


「友達……。嬉しいなぁ。」


 平太は相好を崩した。


「何か平太さんって犬っぽいですよね〜。」


「えぇ。犬の半妖です。」


「まぁ、妖怪女子の餌食にならないように……。」


「え?」


「だっ大丈夫! 半妖ってだけでどうこうならないはずなんで……。」


 この木蓮の言葉の意味を、入学してから平太は知ることになる。


 5日後――――。


 平太は制服のブレザーに腕を通し、チェック柄のタイを締め、私立三協高校の前に立った。


 因みにジャックは、


 訓練指導官の鬼の紅煉さんのしごきで、どこかの山へと行ってしまった……。


 無事だと良いんだけど……。


「まぁ……半妖? 犬ね? ウフフフっ……。」


「オモシロそう……。」


 舌なめずりする妖怪が……窓際から平太を見ていたが……。

 平太はその気配を全く察知できなかった。















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