第3話 現代日本を学ぼう! アルズブートキャンプ♡

 さて、嵐壊はアルに強制連行され彼の家までやってきた。

 そこは、やたら薬臭く、鼻のいい嵐壊には辛かった。


「さーてさてさて! 書類を書いてもらわなきゃなんだけど……。なんか読み書きできないっぽいよね嵐クン。そ・こ・で☆」


 嵐クン?


「嵐クンにはぁっ、特別ちょー詰め込みレッスンをしたいと思いまーっす♡」


 ずずいっとアルは嵐壊に顔を寄せた。


「とくべつれっすん???」


「そー。題して、アルズブートキャンプ!!」


「は、はぁ。」


 すると、アルは人差し指を差し出し、小さな赤黒い艷やかな小さなイモムシを出した。


「それは、イモムシ?」


「コレはね。僕の秘密兵器。ワークスワームっていうの♡ カワイイでしょう? これを鼻から入れて、脳みそに直接僕の知識をインストールさせるの♡ 近未来的でしょ? だーいじょーぶ♡ すーぐ終わるから……ねっ♡♡」


「え……。」


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 嵐壊は断末魔を上げた後、一週間寝込んだ。


 目が覚めると、ジャックさんと……

 だ荼吉尼さん。


 嵐壊は恐怖のあまり布団を頭から被りこんだ。


「荼吉尼さん。睨んじゃダメっす。」


「睨んどらん!」


「大丈夫っすよ〜。荼吉尼さんは……えーと、怒ってないですから……。」


「ホントすみませんでした。まぁ、あの人ちょっと調子乗っちゃったみたいで、まさかここまで張り切るなんて思わなかったもんですから……。えーっと……。壊れてないですよね?大丈夫??」


 嵐壊はそっと布団から顔を出した。


「あの、僕は一体何をされたんですか??」


 あれ??


「言葉が……変わってる。」


 あ、あぁ。


 何か、色々解る。

 俺がいたのは……せんごく……戦国時代だ!


 それで、今は、令和!!


 五百年。


 五百年封印されてたんだ。


「アイツの説明覚えてるか? ワークスワーム。ヤツの血で作ったヤツの分身だ。それを脳に直接送り込み、海馬に情報を強制的に流し込むという滅茶苦茶な教育……洗脳だな。」


 荼吉尼の説明を受けて、嵐壊はぽかんと口を開けた。そして、恐怖を覚えた。


 な何て恐ろしいことするんだ。

 ニコニコヴァンパイア!!


「僕、体は大丈夫なんでしょうか??」


「私が診たが、問題ない。しばらくヤツの接近は禁止しておいた。」


 と、荼吉尼が言った。


「よ良かった。」


 嵐壊は少し肩の力を抜いた。

 荼吉尼さんは怖いけど、悪い妖怪ではなさそうだ。


「なんか色々お世話になって、本当にありがとうございます。」


 嵐壊は深々と頭を下げた。


「まぁ、仕事だ。構わん。暫くは我々の寮に住め。食堂もあるし、食うに困らん。当面はジャックに教えてもらうといい。」


「おお願いしますっ!」


「もう、ヤですよ~。嵐壊さん年上でしょ? 気にしないで! それに、これから同じ高校に通うんスよ〜。改めて、よろしくッス!」


「え……が学校?」


 嵐壊は少したじろいだ。“学校”が何かは解る。(アルズブートキャンプのお陰で……。)

 学問を身につける所だ。

 そんなところに行けるなんて……。ちょっと夢みたいだ。


「そうッスよ? 知識は一応……身に付いた? 感じではある……と思うンスけど、使っていかないと定着しないらしいので、一週間後から行くッス。買い物とか色々あるんで、街を案内がてら一緒にいきましょうね?」


 ジャックさんがニカッと笑うと、嵐壊も嬉しくなってきた。


「あ……ありがとう。」


 嵐壊は思わず涙をこぼした。


「えっ!? どっどうしたッスか!?!?」


「お、俺、今まで居場所無くてな……。妖怪じゃないし、強くもないから……人間にも怯えて……。俺、俺、……生きてて良いだな?」


 すると、荼吉尼さんが


「当たり前だ。そのための妖協連だぞ?」


「妖協連……。」


「そうだ。妖怪も半妖も人間も……快く暮らせる社会にするのが我々の仕事だ。だから……。」


 荼吉尼さんは、手を差し出した。


「ようこそ。令和日本へ、我々は君を歓迎する。」


「はい……。」


 俺は、ためらいがちに荼吉尼さんと握手した。

 そして、俺は新たに始まった人生に、胸を膨らませた。







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