第2話 令和日本にタイムスリップ☆

 これは一体どういう状況なのだろうか?


 目の前には、膨大な妖力を秘めた大妖が二体が、デンッと立っている。


 嵐壊はその圧を受け


「ひっ……!!!」


 と、悲鳴を上げた。


 な……なななな何だべか!?!?

 っここはぁ地獄だべか!?!?


 すると、大妖の一人がパッと妖気を消し嵐壊にスッと顔を近づけた。


「ゴメンねぇ? 怖かった?? ちょっと荼吉尼チャンとだったんだけど……。」


「「?」」


 荼吉尼と青年がハモった。


「ヤダ☆ 荼吉尼チャンコワイッ☆ 獣耳クンが怯えちゃうじゃない!!」


 荼吉尼の額に青筋が走った。

 が、嵐壊をチラッと見てなんとか怒りを収めた。睨まれた嵐壊は氷漬けにされたように固まった。


 こ……怖いぃっ!!!!!!


「仕方ない。キサマの首を落とすのはまた今度にしよう。その半妖を保護してやれ! ジャック!! 任せる!」


「ハイッ!」


 今度はのっぺり顔の青年が前に出てきた。


「え~とぉ。自分、ジャックっす! アイルランドの1つ目巨人族で、今爺様に連れられて日本に留学してるっす。立てますか?」


「は……はいぃ。」


 嵐壊は生まれたての子鹿のように、ガクガクと立ち上がった。


 そして、てぃしゃつなる筒状の着物と、じゃぁじなる伸び縮みする摩訶不思議な袴を与えられ、さっきの話しかけてきた大妖にいくつか尋ねられた。


「さて、じゃまず自己紹介から。僕は、ヴァンパイアで、アルバート・j・ノスフェラトゥです☆ アルって呼んでね〜っ。キミは??」


 ばんぱいあ???

 聞いたこともねぇ妖怪だ。


「あ……。俺は、嵐壊って言うでぇ。それで、ここさ何処だべぇ?? こげぇ不思議な板やら壁やら見たことないだぁ……。」


「見たことない……? さっき渡した服も着方解らなかったよね?」


「はいぃ。」


 嵐壊は肩をすくめた。


「……。もしかして――。」


 アルは何か思い当たったようで、キラッと目を輝かせた。


「ジャッククン。覚えてる? 最近、封印された半妖やら霊力持ちの人間が、発見されたこと……。」


「あぁ。戦時中の闇市で売買されてたヒト達のことですね? 運悪く今まで発見されなくて、全員手遅れだったていうあの……。」


 ジャックはピンときていないようで頭の上に「?」が浮かんでいる。


「…………。じゃぁ、先ず、書類にサインしてもらおうかな?」


 アルはそう言うと、左手を掲げ青い炎を出すと……なんと! 分厚い紙が出てきた!


「あ……。」


 字が書かれているが、嵐壊は字が読めない。辛うじて自分の名前は書ける程度だ。


「さいんって何するだか??」


「あぁ。ここ名前書くの。」


 アルは指で指し示した。そして、名前を書くと……。紙はボウっと燃え上がり、嵐壊の手の甲に焼印のような印を作った。


「あっ……あちちちっ! な何だべ!?」


 嵐壊は手をさすったが、もう印は消えていた。痛みもない。


「ゴメンね~。痛かったよね。でも、もうチョットだからー。」


 アルはにっこり笑った。


「は、はい。」


「出身は?」


「しゅっしん??」


「うーん……生国は何処か?」


「あ…美濃の川北村だで。」


「美濃?」


「はい。」


 アルはジッと嵐壊を見つめた。


「コレは、ビックリだ。僕、マジでUMAを発見しちゃったよ!」


「マジっすか!?」


「モロクの契約印入り羊皮紙にサインして、ウソつけるわけないじゃない!!」


「マジっすか!!?? スゲー!!」


「?????????? え?」


 何を言っているのかサッパリ解らない。


 そして、


 バンッ!!!


「聞いて聞いて聞いて!!! 聞いてよ! 荼吉尼チャン☆」


 アルは嵐壊を抱えて勢いよく荼吉尼のデスクに押しかけた。


「うるさい!! 今度こそ殺されたいのか?」


 荼吉尼はアルを睨めつけた。


「それどころじゃないんだよ!!! 封印されて生き残った最古の半妖を発見しちゃったんだ!!! これは詳しく調べなくっちゃ!! だから~っ、予算ちょーだい♡」


「やっぱりキサマ殺されたいようだな???」


 荼吉尼が殺気立ったが、慌ててジャックが止めた。


「荼吉尼さんマジっす!! モロクの契約印入り羊皮紙にサインして答えてもらったッす!!」


「何!?」


 嵐壊は荼吉尼に再び睨まれて震え上がった。


 ヒィィィィィっ!!


「……。とりあえず保護優先。現代日本について教えてやれ……。当面は……。」


 荼吉尼がこめかみを押さえながら言うと、アルが凄い勢いで、


「ハイハイハイハイハイハイハーイ!!!!!僕!! 僕お世話する!! 貴重な五百年前の生き証人!!! 荼吉尼チャンおねがーい♡」


 と、申し出てきた。

 荼吉尼はすごく嫌そうに顔をしかめたが、はぁとため息を吐き、


「分った。申請書類を渡す。」


 と、アルに紙の束を渡した。


 何が何やら解らない嵐壊は、喜び勇んだアルに荷物のように抱えられ、運搬されて行った。


 嵐壊の運命や如何に。

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