第49話 戦争の火種かもしれません…。

   ◇◇◇


 同時刻――。


 俺はそれから『特別な血だ!』と言われたり『許嫁だ!』と言われたり、『う、浮気だああああああああああ』と言われたりしたよくわからない時間を過ごしたのだが……。


「…………」


「…………」

 

 さっきまでキリッとした表情をしていたフレアさんと、悪戯っぽく笑い俺のことをからかっていた南坂さんの表情から感情が消えた。


「えっと……カシラ?」


 あかりちゃんからの声掛けにも南坂さんは無反応で、その場で瞑想するようにまぶたを閉じる……その姿は恐ろしいぐらい迫力がある……というかそれを通り越して、ゴスロリの服のせいもあってか神秘的にさえ見えた。


 2人の空気を察してか、その場の全員が口を紡ぎ、部屋の空気が重くなる。


(い、いきなりどうしたんだ……? さっきまで和やか……とは言い切れないけど、ここまで殺伐とした空気じゃなかったのだが……り、理由を聞きたいが、な、なんか聞くのが恐い……)


「……フレア」


 数秒沈黙が支配していたが、そんな沈黙を破ったのは2人を除いて冷静な顔をしていた如月さんだ。


「敵は何人かしら?」


「て、敵!?」


 俺は思わず声を出してしまう。え、えっと、敵って……ゴリゴリの傭兵であるフレアさんと南坂さんと若くして会社役員で修羅場をくぐってそうな如月さんのこの空気は……えっ? も、もしかして相当まずい状況。


「くくくっ、翔、落ち着いて。あなたとついでに三矢にも傷1つ負わせないから」


「ついでって何!?」


「ま、待て、三矢。ど、どうやらふざけていい雰囲気じゃなさそうだ」


「ふざけてなんかないけど……確かに。ねぇねぇ、フレアさん」


 少し拗ねたような三矢がフレアさんに友達の様に話しかける。

 お前よく……見た目戦闘力がブロリー並みの人に普通な態度取れるな……。


「敵って何人ぐらいいるの?」


「しばしお待ちを」


 フレアさんはその場で目を閉じ、神経を集中させているようだ……。


 いやいや、ここ密閉されてるし……さすがにわからんやろ……。

 というか、敵が来てるってのも本当か……? 


 俺はスマホを確認すると地下のため圏外だ……無線か何かで、外の情報を聞いたんだろう。


 ……2人ともイヤフォンとかしてないけど。


「はいはい、お兄さん、何を考えてるか知らないけど、こういう人には常識は通用しないんだから」


「そ、そうは言っても……」


「敵は15……16、いや17ですね。しかも、敵に手練れがいますね……恐らくは数持ちです。数持ちである『グレイヒューマン』を圧倒しています」


 ……さいですか。

 な、なんか俺の日常って遠いところに言った気がするなぁ。


 と、俺の謎の黄昏をよそに如月さんは小さく頷く。


「……数持ちの中では戦闘向きではないとは言え『グレイヒューマン』を圧倒するなんてね。『誰』が来ているのかしら?」


 はぁ……俺にはわからない世界……ん? 待て。外で敵が襲ってきているってことは……厨房にいるらしい芽以さんは……。


「……っ!」


 俺はそう考えた瞬間立ち上がり、部屋を飛び出そうとした。


「お、お兄さん!?」


「お前はここにいろ! ちょっと、外の様子を見てくる!」


「それ死亡フラグだよ!?」


 俺はそんな言葉を無視して、足り出して、階段を駆け上がった。

 マジかよ……俺のためにここまで来た人を危ない目に合わせられねぇだろうが!

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